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最近姫様のお守り役になることが多い。俺だって剣術の勉強をしなくちゃいけないのだが、まぁ上が言うのだから仕方がないだろう。それに遊ぶのは楽しいし

姫様の部屋へと招かれて入れば、机の上にはこの前つくった花冠がまだ残っていた。少し、枯れている。捨ててくれたって全然構わなかったのに


「姫様。おはようございます。今日は何をしますか?」

「ジオ・・・・?」


ぽつりと、本当に小さく呟かれた自分の名前に驚いたが、初めて名前を呼んでくれたことにジオは素直に喜ぶ。姫様のお守りももうすぐ二桁へと突入しそうになっているほどだ。名前は教えたはずなのに、呼ぶ機会が全くと言っていいほどなかった俺たちは俺が一方的に名前を呼ぶだけで、俺の名前を姫が呼んでくださったことなど今までなかった

ベッドに座り込んでいた姫様の目の前まで移動すれば、姫様はゆっくりと顔をあげる

金の睫毛が上下に動いては青い瞳が揺れた


「そうです。どうかなされました?」

「いえ、何でもありません」


スッと無機質なものへと表情を変える姫様に、ジオは先ほどまで名前を呼ばれたことに喜んでいたというのに、すぐに面白くないと思う


ジオはゼルダ姫を完璧に人間とは見ていない。

おもちゃのようなものでもない。ジオからしてみれば本当に、よく出来た人形のような存在だった。元々一国の姫とただの平民という立場の違いがあり、姫様は遠い存在で触れることも出来ぬようなお方だ。なんだかこんなにすぐ傍にいると逆に違和感があった。

姫様には、触れてはいけない

だが、ジオは人形相手にしても子供相手にしても、スキンシップは大事だと思った。必要な時期にこういったことをしておかないといけないと、ジオ自身も親に何度も言われていたから。姫様は喋るお人形。姫様は無機質な人間。

どちらともつかぬ認識ではあったが、確かに相手はしてやりたいと思ったし、花冠を嬉しそうに受け取ってくれた姫様を思い出せばまた遊んでやりたいと思った


笑顔が、とても可愛らしいのに。将来有望だとまで言われているのに。笑わないなんて勿体無い。一番何も考えずに笑えるのは、子供のときだけなのに


「姫様・・・・・・・」

「・・・・・・・・」

「具合が悪いのならばいつでも言ってください。俺、医者を呼びに走るぐらいには使えるやつなんで」


さて、どうしようか。姫様は部屋で大層暇そうにしていることだろうから、部屋で何か出来ることを教えてあげようか

編み物か、お絵かきか、裁縫か。生け花でもなんでもいい。暇を少しでも潰せるものを、探そう

いや、むしろ全部しよう。全部一緒に姫様とやって、経験してもらって、全部の楽しさを味わってもらおうじゃないか。趣味だってないと言っていたし、なんならピアノだって少しは俺も弾ける。ドレミを教えるぐらいは出来るだろうから、それもいいかもしれない

まぁどっぷりピアノにハマってそういった道を究めたいというのであれば、国一番のプロを呼んだほうがいいだろうが。姫は金ぐらいある


「では姫様。まずは編み物をしましょう!」

「まぁ、編み物が出来るのですか」

「少しだけですけどね。そうですね・・・・・これから寒くなってくるでしょうし、マフラーか、もっと時間があって姫様が編み物をお好きになられたときはポンチョも作ってみましょうか」


もちろん俺が手伝うことにはなるかもしれないが、それでもいいと思う。姫様が一人で編み物が出来るようになってしまえば後は楽だ。何か夢中になれることはあったほうがいい

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