×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -








未だかつてないほど俺は困り果てている。それはどうしてか。


何故かゼルダ姫様が目の前にいるからだ。





盛大にため息をついてしまえば姫様に失礼だからと、精一杯息を呑み込んでは姫様を見下ろす。またお守りか。俺は発狂したくなった

だって姫様は何も喋らないんだ。俺は普通の人間であるしおしとやかな男でもなければそういった生活をしてきたわけでもない。貧乏人だったし金持ちが何して遊んでんのかなんて正直想像もつかない。ましてや子供だ。俺は何をしてあげたらいいんだ

別に姫様が嫌いなわけではないが、どうしても、こういうよくわからない子供は苦手だった

子供は素直だからいいのであって、こんな、にこりとも笑いもしないような女の子なんてまっぴらごめんだった。好きな食べ物もわからなければ一緒に生活をしているわけでもない。姫様の趣味だって知らないし姫様が欲しいものだって俺には見当もつかないぐらいで。

ましてや周りの子供のように姫様にも接してしまえば“無礼”になるのである。どこまで相手してもいいのか、どこまでスキンシップはOKなのか、抱き上げるのは駄目なのか。もう全部わからない


「姫様、今日も庭へ行きましょう。花が綺麗に咲いてるんですよ」

「そうみたいですね」

「今日は・・・・何かしますか?」


実は前回面倒をみたとき、ものすごく失敗していた。姫様が喋らなければ俺も話題に困ってしまってどうしようもなくなり、結局重苦しい時間が過ぎていくだけで何も遊びらしい遊びはしていなかったのだ。本当に、散歩しただけ

それでは駄目だと俺は思う。どうせ子守を任されているのならば、それ相応の遊びや楽しい時間を姫には過ごしてもらいたい

俺は庭に座り込んでゼルダ姫を石畳の階段に誘導した。階段に腰を落ち着けた姫様を見て俺は庭に咲いている花を物色し、綺麗な、出来るだけ綺麗な花を一輪一輪摘んでいく。姫様は首をかしげて俺をみていた

しばらくそれをしていたが、ある程度花が集まったところで姫様の元へと戻り、慣れた手つきで花をつなげていった


「何を・・・・つくっていらっしゃるのですか」


無関心そうな言葉が俺の耳に響いて、それでもやっぱり、ゼルダ姫は不思議そうにしていたものだから


「花冠といいます姫様。こうやって花を一輪一輪つなげて、輪を作るんですよ」


可愛らしいでしょう?これ、姫様にあげますよ

決して手先の器用な男ではなかったが、知識と経験は少々あったジオはそういって姫様の頭にかぶせてあげた。桃色の花が姫様をより飾り、可愛らしく見せる

形は歪だった。お世辞にも綺麗とはいえないものだった。ゼルダだって、どこかでこんな花冠の話を聞いたことがある気がしたが、こんなに歪な輪っかは初めてだと思ったほどだ。

無関心ではあった。最初は。

相手が困ったように自分に接してくるものだから自分もどうしていいのかわからなかった。わがままは立場上言ってはいけない気がしたし、抱っこをねだるのもなんだか申し訳なく感じていた。姫様だから、と一線引かれるのはもう嫌だったのである

それでも、優しい笑みを携えて花冠をつくり、頭に乗せてくれたこの兵士だけは。ゼルダ姫の心に残った


「指輪も出来るんすよこれ。あ、姫様やってみませんか?」

「・・・・・・・やります」


上辺だけの笑顔ではなかったのだ。社交辞令がまわりを占めるゼルダにとってジオは輝かしいものに見えてしょうがない。ジオは元々愛想笑いというものがどうも出来ない性分だったこともあり、子供相手になれていることも、色んな遊びを知っていることもあって、ゼルダは大層綺麗な笑みを浮かべて花を摘んだ。嬉しかった。遊んでくれてありがとうと言えたら、どれだけよかったか。

prev / next

←back