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編み方を覚えた姫様は毎日黙々と何かを編んでいるそうだ。それは良かったと、インパさんから報告が来たときは喜んだ。インパさんだって忙しい身である。姫様のお相手をするのにも時間が足りないのだ

そして今日も姫様のお守りである


「姫様」

「あ、」


綺麗な金の髪を揺らしてこちらに振り向く姫様に、俺は首をかしげながらも近づいた。机の上を見ればすっかり枯れて茶色へと変色してしまっている花冠が見えて、何故捨てていないのだろうと思った

だがいずれは姫様もお捨てになられるだろう。机の上の整理ぐらいは自分で出来るらしいからな

本当は俺が捨ててもよかったのだが、そこまでは突っ込む気にもなれない。捨てるものは捨てるで姫様にはしっかりしてもらわなければ


「またジオ・・・・」

「えっ」

「・・・・・・・・・・・・・」

「そ、そんなに俺が嫌ですか?なんか無礼なことしました?すみません」


心外だ。何もしてないつもりだったのだが。

ジオは姫様の言葉に酷く落ち込んだが、眉を下げて困ったようにしているジオを見てゼルダは急いで立ち上がる。そして初めて、自分の言葉を口にした。珍しく声の音量も聞き取れるほどだ


「ち、違います!違うのです!」

「・・・・・・・?」

「別にわたしは、ジオのことが嫌なのではなくて・・・・」


もしかして気を使わせてしまっているのだろうか?でも姫様がこれだけ必死になられるのは珍しい。

ジオは驚いたように姫様を見たが、やがて姫様の言葉に心の底から満たされる温かさを感じた


「また、きてくれて、うれしいのです」


他の兵士たちでは嫌なのです。ジオがきてくれて、うれしいのです

それはあまり感情を表に出せない姫様の、精一杯の気持ちだった

ジオは喜んだ。姫様が笑った。数えるほどしか笑わない姫様が笑ったのだ。自分の子供が初めて笑ったときのような、赤ん坊が顔を引き攣らせているだけだったとしても笑っているように見えるような、そんな場面を見たときみたいな気持ちだった

嬉しさのあまり姫様を抱きしめたら、思った以上に小さかった。けれどもジオはそんなの気にもとめずに、恥ずかしがる姫様をも可愛いと、精一杯気持ちを伝えるように抱きしめた

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