#「はい。よろしくお願いします!」
朝食を食べ終え、部屋に戻ろうとしていたら使用人の人から呼び止められた。それでまた、食堂に行くときのように案内された場所が、
「王の手前、無礼のなきように」
王!?マジかよ!
あたふたする暇もなく大きな扉が開かれ、割と大きな部屋が現れる。執務室だろうか。机の上には山のように書類が乗っている。私あんな量の書類、初めてみた・・・・・
唖然として突っ立っていれば、使用人の方に軽く背中を押される。なので足を動かして部屋へと足を踏み入れた。「失礼します」というのも忘れなかった。ナイス。
初めて会ったときのように挨拶をされて、私もしっかりと挨拶を返す。王と呼ばれた男の人の姿には見覚えがあったが・・・・・まさかシンさんって、王様のことなのかよ。わかりづらいわ!確かにいやにキラキラした装飾品つけてたけど!
何を言われるんだとビクビクしていたら、王様は動かしていた手を止めて、来客用のソファに座った。誘導されて、私も向かい合うようにしてまた別のソファに座る。
「急に呼び出してすまなかった。君には話をしておかなければ、と思ってね」
「はぁ。王様直々にですか」
って、しまったぁぁあ!!
つい滑った口に手を当てる。いや、別に悪口とか言ったわけじゃないし!でもさすがに一国の主に向かってはダメだったかなぁぁあ
何が「はぁ」だよ。気が抜けすぎ!
王様もちょっとポカン、としてたけど、なんか流してもらえた。命拾いした・・・・!!
「そうだ。俺から直々に君に話がある。聞いてくれるね?」
「はい」
小さくつぶやくと、王様は私がうなずいたのも見届けてから話を始めた。
単刀直入に言うと、王様に別の世界の人間だろう、という推測を投げかけられた。え。
「ど、どういう・・・・」
「君がこの国へ来た原因まではわからない。こちらへ来るまで君は、何をしていた?」
「何をって・・・・仕事が終わって、帰ってきてたんです。すっごく雨が降ってて霧が深かったんですけど、そのまま歩いてたら、マスルールさんに発見されました」
嘘は言ってない。嘘みたいなことなんだけど。
よほど私が困ったような顔をしていたのか、王様はつとめて明るい表情で提案をしてきた。なんでも今、使用人が足りないのだそう。
「帰る方法はわからない。だが探してはみるさ。見つかるまでしばらくかかるだろうから、この王宮にいるといい。そこで提案だ」
「?」
「今、ちょっと困っていることがあってね・・・・」
その困っていること、使用人が足りないこと。なんだか偶然にも辞職する人達の時期が重なってしまったようで、今人手不足らしい。だから使用人として働いてくれと。
もちろん働きに見合った対価も出すと言われては、うなずく他なかった。いいけど、身元がわからない私を働かせていいのだろうか・・・・・まぁ弱っちいやつって認識だから、もし何かあっても大したことは起きないだろうと考えているのかもしれない。間違いなくそうだけれども。
衣食住を提供してくださるそうなので、笑顔でその提案をのんで感謝の気持ちを述べた。王様は人の良い笑顔を浮かべて、握手を求めてきたので、それを握り返す。
「今日は王宮の中をまわってみるといい。仕事は明日から頼む」
「はい。よろしくお願いします!」
そうか、王宮って見た感じでも相当広いから、どこにどんな部屋があるのか覚えておかないといけないんだ。
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