#「おはようございます」
何をすべきなのかわからず、とりあえず携帯を見た。時刻は24時を回ってるはずだというのに、窓の外を見てみればそこは明るい。携帯が突如狂ったようにも思えなくて、時差か何かの問題だろうと適当に考えた。
それから、買った食材達。なんだかお腹がすいてきたのでおばあちゃんへのお供え物を食べてしまいたい衝動に駆られるが、そこは我慢した。いますぐに、もしかしたら帰ることが出来るかもしれないし・・・・・再度お供え物を買うお金は、生憎ともう持ち合わせていない。あと三日もすれば給料がはいるんだけど。
と、いうか。どう帰ればいいんだ?
突如不安が襲ってくる。
「どうしよう・・・・」
どうしたらいいんだ。お腹もすいたし不安過ぎて泣きそうだ。
ぐるるる・・・・とお腹の中で雷でも鳴ってるんじゃないかと思うような音が鳴り始めて、仕方なくリンゴに手を伸ばした。お供え物として買ったものだがこの際しょうがない。ここは気温も比較的高い国みたいだし、あまり残していても傷んでしまうのがオチだろう。
自分の服でリンゴを磨くと、そのままかぶりつく。しかしこの品種、安いがあまりおいしくはない。
しばらく無心で食べ続けて、芯だけ残った。それを鞄にいれていた小さなビニール袋にいれる。ハンカチで手を拭いてから、携帯を見ると40分が経過していた。
今誰かに、今の状況を尋ねかけるのも気が引ける。勝手に動き回ることも出来ないし、寝るしかない。
元々部屋に準備されていたベッドに寝転ぶと、目を閉じた。見知らぬ場所なので寝付けるかどうか心配だったが、まるでそんなことはなかったので自分の図太さというか、そういったところに感心した。
▽▲
「おはようございます」
部屋の扉がノックされたので返事をする。挨拶もちゃんと返すと、この王宮の使用人らしき女の人が私に頭を下げた。あんまりいい気はしない。というかもう朝!?
「朝食が出来ております。ご案内いたします」
まじかよ。
お願いします、と言って女の人の後ろをついていくと、丸く大きなテーブルがいくつもあり、椅子もそのテーブルを囲うようにして並んでいた。食堂だろうか。
食堂の奥側にあるテーブルへ案内されて、椅子に座る。すぐさま並べられた朝食は今まで食べたことがないくらい立派なものだった。な、なんだと・・・・!?こんな、こんなちゃんとした朝食、食べてもいいの!?
まぁ主食がパンということはあまり気に食わないが、それでもスープやらハムやらサラダやらおいしそうなものが並べられているので、文句は言わない。言えない。そんな、言えるような立場じゃないのは重々承知している。
食べてもいいのだろうか、とそわそわしていたら、何故か昨日のマスルールさんが私の傍に座った。
おいおいなんだよ。私は今から絶品(であろう)朝食を楽しもうとしているところだったのに!
「おはようございます」
「はよ、」
まだこくり、こくりと頭が傾いているのを見ていると、眠いのだろう。朝に弱いのか・・・・
そのまま寝てしまうんじゃないかと思いながらも、マスルールさんの目の前にも朝食が並ぶ。うん、量がやばいことには突っ込まないよ、私。
しかし私なんぞがこんなものを食べてもいいのか、という疑問が消えることはなく、せめて隣にいるマスルールさんが食べ始めてくれれば、私も少しは気兼ねなく食べれるのに、と思う。言っとくけど、私ここら辺じゃ身元もわからないような女なんだよね。本当に大丈夫、かな・・・・・
毒が盛られてたりとかしないよね?
さすがにない、と信じたいんだけど。
ちょっと不信感が出てきて黙っていれば、やっと徐々に頭が覚醒してきたのか、マスルールさんは朝食に手を伸ばし始める。え、えー・・・・本当、昨日から戸惑ってばかりだ。でも指示待ち人間じゃなくてもさ、突然こんな状況になったら誰だってこうなるよ、ね?
食べずに朝食をガン見していれば、マスルールさんがそれを見かねてか「食べないのか」と聞いてきた。食べたいよそりゃもう喉から手が出るくらい!!
「いえ、たべ、ます。いただきます・・・・」
両手を合わせて、フォークを使って食べ始める。まぁ、こんなところじゃ生きてても毒で死んでも、あんまり苦しいのは変わらないか・・・・そう思えるのはおそらく、というかやはり私がちょっと他より図太いからだろう。
っていうか朝ごはん出されるとか聞いてないから、さっき部屋で蜜柑食べてきちゃったよ。しかも二つ。いや、かといって朝食がはいらないわけではないけれども。でも朝食出るんだったら、蜜柑も大切にとっておいたのにな〜
「(美味い・・・・)」
「・・・・・・・・・・・・」
「(はぁ〜しかしどうしたもんか。飛行機とかあんのかな。なんか、なんでだろう。到底帰れるようには思えないんだけど)」
今更だけど食べ終わったらどうすればいいんだろう。そんなことを考えながらあたりを見渡してみると、私が来たときよりもずっと食堂は賑わっていた。いろんな人が集まってくる。
髪の毛の色も、顔立ちも、肌の色も、みんな全然違う。
驚いて食堂に入ってくる人達をみていると、なんかすっげぇでかい男の人とか、ドラゴンみたいな、人間とは思えないような生き物が目に映ったことによって私は悟った。
あぁ・・・・・私の世界じゃないな、ここ
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