#「なんとでも言え」
マスルールさんに一度話をした。
私の手には余るので、マスルールさんの専属から外してもらうことにしたと。王にも話はしてあると言った。けれどもマスルールさんはそれを許しはしない。
「いや、専属から外れても使用人やめるわけじゃないですし、最近マスルールさんいつも私のところにいるじゃないですか」
「まあ・・・・」
「マスルールさんを起こしたり服を持っていったり。そういうのは全部、現時点でエルゼさんが行ってます。なので、私は必要ないんですよね。ここまでは分かりますか?」
「あぁ」
「つまり私が専属としてマスルールさんの手元にいる必要もありません。マスルールさんはいつも私にこうやって、会いに来てくれます。なので専属だろうがそうでなかろうが大して変わらないのが現状なんです。理解しました?」
「理解したからといって、誰もそれを許すとは言ってない」
「たちの悪い駄々っ子だな!」
「なんとでも言え」
せっせかシーツを干しながら、説明するも虚しく。
なんで納得しないんだろうか、と不思議に思いながらも仕事を終わらせて、シーツが入っていたカゴをマスルールさんが持ってくれたので一緒に室内に戻りながら、ふと思い出す。
「そういえばまた煌帝国に行くらしいですよ」
「そうか」
「マスルールさんも連れていくと王が仰っていました。それまでには専属をやめたいと思ってるので、できれば許可してほしい」
「却下」
「我儘いうな!」
「仮に俺のもとから異動したとしても連れていく」
「それありなんですか!?船酔い嫌だから逃げようと思ったのに!」
「諦めろ」
「ちくせう」
もうなんなの。そんなに私を苦しめたいの?吐くよ?目の前で嘔吐してもいいっていうの?前回したけれども!
それでも連れて行こうってんだから、中々マスルールさんは鬼畜だよね。
「あ、私これから休憩ですけど、どうしますか?」
「・・・・ん。昼飯食いに行くぞ」
「じゃあちょっと待っててください。準備してくるんで」
今日は外食するらしいので、使用人として与えられた制服から、動きやすい私服に着替えることにした。最近外食が多い気がするなぁ・・・・・まぁマスルールさんがたまにおごってくれるからいいけど。出費はそんなに痛いものではないし。
準備をすぐに終わらせて、マスルールさんと王宮から出る。門の近くでエルゼさんと会ったが、特に会話をすることもなく、挨拶さえもする雰囲気ではなかったので、なんとなく居心地が悪いながらも通りすがり様に頭だけ下げた。
最近、エルゼさんが私を見ていることが多い。少々不安だ。
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