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 #「王が一泊二日とか仰るから!」



やはり大きな船といえども、波があれば揺れるもので。


「っう・・・・ぷ」

「・・・・・・」

「なんで無言で離れるんですか!!」


他人が苦しんでいるというのに全く!なんてやつ!

必死に乗り物酔いに効く薬はなかったかと鞄を探ってみたけれども、そもそも私は前の世界では車酔いなんかしない方だったし、船なんかちっとも乗らなかったのであるわけがなかった。まぁフェリーくらいは乗ったことあるけど。でもあれはこちらの船よりも安定しているものだったから、酔うことなんてなかった。

というか王様だよ!紛らわしい言い方しやがって・・・・!


「王が一泊二日とか仰るから!」

「そんなすぐにつくわけがない」

「そうでしょうけど・・・・・!」


煌帝国で一泊二日ってことか。船での時間はそういえば言ってなかった

あれ?ていうことは二泊三日になるってことだけど。例のマグノシュタットから戻ってくるらしい使用人の人とはすれ違いになっちゃうのか。

ふと考えながら、やばいそういえばルディさんの仕事手伝う予定だった。そこまで思い出してから海を見ていた顔を上げる。吐き気はだいぶおさまりはじめていた。


「・・・・・・・あ!そういえば思い出した。私が大事にとっておいたお菓子、食べたのマスルールさんでしょう!?」

「ばれたか」

「ばれたかじゃないですよ。あれ結構いい値段するし、美味しいって評判のお菓子だったのに・・・・・!大事にとっておいたのに!」

「いらないのかと思って」

「だから大事にとっておいてたんです!!」

「お前の物は俺のものだろう。使用人」

「んだと!?」


それとこれとは関係がないわ馬鹿!

しばらくマスルールさんと睨めっこしていたら、ルディさんに呼ばれたので急いでそちらに向かった。というかマスルールさんは無表情だし、基本的に睨みつけてたの私だけど。でもあの人目つき悪いし角度的には睨みつけられてるように見えるよね。見下ろされたときの目は割と未だにビビる。


▲▽


「おぉ、マスルール。調子はどうだ?」

「変わってないッス」

「そうか。しかし彼女は辛そうだったなぁ・・・・・」

「コナギのことっすか?」

「あぁ。働いてくれるのは嬉しいことだが、無理するのはよくないな。コナギは恐らく自分から休みたいと言えないタイプだろう」


じゃないと、あそこまで疲れた顔はしていないはずだ。

シンドバッドは、日々死にそうな顔で働いてる彼女を度々見かけていたので、少し心配していた。一使用人として頑張るのもいいが、やはり体調管理などは自己責任にもなってくる。特に使用人になりたてのころなんかすごく辛かっただろう。

環境がまるで違う世界に来て、おまけに訳も分からず働くことになり。環境が変わればもちろん予期せぬことに体調は優れなくなる。それにプラスであんなにキリキリ動いていては、いつ倒れてもおかしくはなかっただろう。

彼女は大体なんとかなると考える人間のようだが、体調の崩れ具合はなんともならないときだってあるのだ。


「マスルールからも言ってやってくれ。休憩はほどほどにとるべきだとな」

「ッス」


その数十分後、無理やり椅子に座らせられて食事をとらされるコナギの姿が目撃された。彼女は前日の夜からごはんを食べていなかったそうなので、ものすごくお腹は空いていたのだが。マスルールがまた働き出さないようにと監視し続けていたので、意味もわかっていないコナギはそれに戸惑いながらも味のわからない食事をとることとなった。

お願いだからずっとこっち見るのはやめてほしい。



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