※仮面後かもしれない
リンクのことが好きになった。
自分の気持ちに気付くまでは、なんてことのない日常の話をしたりだとか、今若い人の間で話題のお菓子や服の話をしたりとか。いたずらに抱きついてみたりもした。でもそんなの全然、することに関しては抵抗なんてなかったし、むしろスキンシップは好きだった。
だけれども、彼が気になり始めて、好きになってからはぱったりとそういうことをしなくなった
それが恥ずかしいとか、そういった感情が原因ならばまだいい。まだ良かった。けれども彼はまだ10歳になったばかりであるし、つい最近ではまだ生きてきた年数が二桁にもなっていなかった子供なのだ。それに比べて私は15歳。
さすがに十代の間で、まさか5つも年下の男の子に手を出そうなんて思えないよね〜!好きになっちゃったケドね〜!
ってな感じで罪悪感と恋情を日々募らせながら、今日も頑張って生きている
「ねぇ」
でもさっそくピンチになってる(白目)
何故か避け始めた私の限界がくるのではなく、リンクのほうがそれに気付いて、なおかつ私の行動が気に入らなかったらしく、怒り始めた。そりゃあ理由もわからないまま避けられたら、腑に落ちないところはあると思うけど・・・・・
なんとなく、彼は洞察力というか、観察力というか、気付くのがはやい。7年後に飛ばされて一度大人の体になったことがあるからか、少々大人びすぎている。それ故に私の言動にも目ざとく気付く。
ただ、私の気持ちには気づいていないようなので、そこだけホッとした。言うわけにはいかないのだ。さすがに10と15はアウトだろう。
「なんで目合わせないの」
「別に合わせなくてもいいでしょ」
「あまり近づいて来なくなったし」
「それは・・・・その・・・」
「あんなにかわいがってくれたのに。僕のこと嫌いなの?」
大きな瞳で上目遣い。私はリンクのこれにめっぽう弱くて、思わず少し顔をしかめてしまった。今でも可愛いと思う。まるで弟のようだと、ついこの前までは思っていたはずだったのだ。
なんとも言えなくて黙りこむ。そっとリンクの髪に指を通せば、それはさらさらとすり抜けていった。
愛しいと思うのだけれど、
「ううん。嫌いになったわけじゃないよ。ごめんね、不安になった?」
「・・・・・・・・・・」
「なんていうか私、ちょっと、おかしくなったみたい」
今にも彼の顔を見ると、自分の首から上に熱がたまっていきそうだ。逃げるように視線を大きくずらして、それから言おうと思っていたことを口にする。
「あのね、実は言いたいことがあったの。私、もう旅にはついていかないことにするわ」
「どうして?」
「したいことが、あるから」
「だからわざわざ僕をひとりにするの」
「あの、ごめん。ごめんね」
このままじゃあ君とは一緒に居られないから。
そんなことばかり考えて、リンクを突き放そうとしたのだけれど。ふとリンクの表情を見たら、驚くほど冷たいものになっていたから、私はヒェッと肝が冷えた。なんでそんな顔をするのかちょっとわからなくて、戸惑っていたら突然、鬼神の仮面をつけはじめた。
びっくりして私よりも身長が高くなったリンクを見る。リンクは何も言わない
「ね、ねぇ、どうしたの?敵なんかどこにも・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「お願い、なにか言ってよリンク・・・!」
だんだんとリンクを恐ろしく感じ始めて一歩後ずさるが、すぐさま手首を掴まれて離れられなくなってしまった。
引っ張って抵抗してみるものの、微動だにしない。これはリンクが仮面を着ける前でも決して変わらぬ現状だったのだろう。力がとてつもなく強いのだ。
ミシミシと骨が軋む音がして、私の手がそのまま彼の顔の近くに持っていかれる。何をされるのか予想もできなくて恐怖に体を震わせていれば、やっとリンクが口を開いた。
開いたのだけれど
「選ばせてあげようか?」
ここで殺されるのと、一生僕に着いてくるの。どっちがいい?
「え・・・・?」
「早くしないと殺しちゃうよ」
「つ、ついてくっ!!ついてくから!」
「じゃあ約束!」
そういって私の左手の薬指をかみちぎった彼は、とてもうれしそうな顔をしていて、一瞬だけ意味がわからなくて、痛みが襲いかかってくるのにとても時間がかかった。