版権2 | ナノ





「一松! 一松! お願いだ! 出てきてくれないか!」
もう放っておいてほしい……でもカラ松が心配してくれてる。嬉しい。天使か。

「一松…………俺は、お前が腐男子で嬉しいと思ったんだ」
やっぱりバレてるし! そうだよな決定的だよな! でも誰だよこいつに腐男子なんて言葉教えたの!

「俺も…………俺も、腐男子だから」
「え」

「高校の頃、雑誌に 『いま、腐男子がアツい!!』って載ってて、モテるのかなあとこの沼に足を踏み入れたんだ」
なにその雑誌。馬鹿だろ。こいつはもっと馬鹿だけど。

「それで、俺、ずっと隠れて腐男子やってて…………でも、一松に隠し事するの、つらいなって思ってた」

僕も、そうだ。
腐男子は、何かに萌えるということは、僕の大事な一部なのに、それを大好きな人に隠さなければならないことがつらかった。だけど、バレて嫌われたらと思うと怖いのに、僕の一部を捨てることだけはできなかった。

「だけど一松にバレて嫌われたらって思うと怖くて…………俺の存在を否定されるような気がして」

だから、本当はバレたことについては、ほっとしたんだ。もう隠さなくていいから。
ただ、カラ松の反応が怖くて逃げただけ。知りたくなくて、逃げた。

「俺は…………兄弟だってそういう目で見るようなやつなんだ」

なにそれ僕もなんだけど。

「トド十とか、大好きなんだ」

ま じ か


――ガタッ


「僕も、トド十大好きです」

あ、思わず出てきてしまった。

「いちまつぅ!」

そこには泣きはらした目のカラ松がいて。強く抱きしめられた。
ああもう、こいつに隠し事なんてやめよう。
全部話そう。きっと、こいつのやたら広い心なら、何でも受け止めてくれるだろうから。

「カラ松、あの本だけど」

本当は僕が書いたんだ、って。
言ったら、驚くだろうか。
読むっていうだろうか。それは恥ずかしいけど、でも、僕がカラ松を想って書いたものには違いないから。初めてカラ松に書いたラブレター、みたいなものだから。

「ああっ! 実は俺も大ファンなんだ!」
「え」

目を輝かせて、やれ、どこが素晴らしいかとか、サイトにある作品も全部読んでるだとか、語り始めるカラ松。

それを見てしまった僕は、どうしても、あの本の作者がこんなゴミクズであることを、伝えることが出来なくなってしまった。

――カラ松の夢を壊したくない

こうして、僕のカラ松への秘密は1つ残ったままになったのだった。


*おわり?*





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