版権2 | ナノ




※『 カラ松が腐男子なのをバレたんだけどトト子ちゃんも腐女子だった話』の続きになります

※腐男子はどんどん増えていきます








好きになったきっかけはよくわからない。幼い頃は兄弟というより気の合う仲間にすぎなかったし、思春期には幼なじみに抱いた憧れを恋愛のそれと錯覚していた。
思ったことを言えなくなって、素直に今までのようにできなくなって、それでようやく気がついた。
自分は、もしかして、あの人を好きなのではないか。

疑問は確信へと変わる。

自分は、あの人のことが好きなのだと。



昔はもっと簡単だった。息をするように相手の思うことがわかったし、相手にもこちらの思いが伝わった。
だけど今じゃ何かの歌じゃないけど3分の1も伝わる気がしなかった。

「ずっと好きだったんだ」

ああ必死になってるなあと自分でも思う。だって、だって、嫌われたくなんてない。嫌われたくないのにこんなことして。嫌われるに決まってるのに。
弟として見て欲しくないと言いながら、兄貴ぶるこいつにすがりつくんだ。

「あいしてる」

同じだけの気持ちなんて返してくれるはずがないのに、暗示をかけるように何度も何度も囁いた。


「兄弟としてじゃなくて。あんたのこと、ずっと性的な目で見てた」






   ▼▼▼



――パタンッ

そこまで読んで、カラ松は勢いよく本を閉じた。
あれ、なんか、こんな台詞聞いたことあるな、とか思うのだけれど。きっと気のせいだなと言い聞かせる。妙に顔が熱くなるし、心臓がうるさいし。

久しぶりにあの本が読みたいと思って、預かってくれていたトト子ちゃんから返してもらって。居間で読むくらいなんだからトト子ちゃんに隠してもらっている意味なんてあるんだろうかと首を傾げながら読み進めて読み進めて。
最初に読んだ頃には気にもとめなかった箇所がどうしても引っかかった。

この本、BLにしては珍しいことに攻めの視点の物語なのだが、主人公である弟が兄に抱いた想いに葛藤するシーンがリアルで泣ける、なんて言われていた。
それがどういうわけか、今読むと、自分と弟で再現されるのだ。



――あんたが好きだ


まっすぐな2つの目が、怒りや憎しみを持たずにこちらに向けられるのはずいぶんと久しぶりで。



――性的な意味で


付け足された言葉は雰囲気とか色々なものを台無しにしている気がした。いや、兄弟で雰囲気とかないし。あ、でも性的な意味って……あれ?
この本だと弟が兄にキスしてそれから18歳未満には言えないようなあんなことやこんなことが行われるわけだが、先日の自分たちにはそんなことは起きなかった。起きるはずがない。

だが、そういえば一松はキスしようとしてこなかっただろうか。
それをパニック状態のカラ松は、突き飛ばして逃げ出さなかっただろうか。


そして、それは先日とかじゃなくてほんの2時間前の出来事ではなかっただろうか。




(現実逃避はもう終わりだ)



家を飛び出し、トト子から本を返してもらい、家に
戻るとそこにはもう一松はいなかった。それでそのまま本を読んでいたのだが。
よくよく考えたらそんなことしている場合じゃなかった。カラ松は一松を突き飛ばして逃げたのだ。一松はショックを受けているのではないか。

だが、明確な答えを持たない状態で一松に会っても傷つけるだけではないか。

それでも1人で答えを出すのは難しく、カラ松は誰かに相談することを決めた。
ツイッターは……一松だけの味方をするに違いない。第三者の視点から冷静にアドバイスをしてくれる人間がいいだろう。

と、なると。


「チョロ松、相談があるんだが」


ちょうど家にいたすぐ下の弟が適任だろう。そう、思っていた。



「一松に告白されたんだがどうしたらいいと思う?」

「……た」

「ん?」

「一カラキターーーー!!!」




…………あれ?

もしかして、相談する相手間違えた?





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