短編 | ナノ 兄妹漫才(ファミ・リマ・マート)


「あなたとコンビにファ○リーマート♪」

昔は兄のファミがこの歌を歌う度に止めていたものだ。リマはぼんやりとそんなことを思い出していた。
しかしいつの間にか兄の下手くそな歌にも慣れてしまった。リマも、弟のマートも。そしておそらくはお客さんも。
そこまで考えてからリマはハリセンをどこにやったかと手探りで確かめる。

――スパーン

小気味よい音が響く。


「店に変なポスター貼らない!」
「ぐぁ……!」

ハリセンを振り下ろす先はもちろん兄だ。
自分の店にポスター貼るくらいいいやろ、という反論に再びハリセンを振り下ろす。

ポスターには「相方募集中」の文字。つまりまあ、お笑い芸人を目指す兄は店で相方を募集するつもりらしかった。

「店は相方を募集するところじゃありません」
「ちぇー」
「だいたいお兄ちゃんは、一度も関西に行ったことないでしょ?その下手な関西弁もどきも使わないで」
「あはは〜」
「笑ってごまかさない」

こちらも最早恒例と化した兄妹漫才もどきにお客さんも苦笑いする。
……別にいいけど。

「…………それにほら、相方ならサンクさんがいるじゃない」
「なんでやねん」
「サンクさんならお兄ちゃんの相方にピッタリじゃない」
「ないないないないそれだけはない!」

サンクさんというのは兄の同級生。
兄が一方的にサンクさんを嫌っているというかライバル視している関係だ。

「むぅ……いいじゃない。ピッタリなのに」
「アイツだけは相方にせーへんからな」

残念。サンクさんが相方なら兄が芸人になっても良いと思ったのに。

「……あ、私ちょっと買い物に行ってくるね」
「おー」
「マート、ファミ兄のことちゃんと見張っててね」
「ん」
「なんで!?」

それは放っておくと兄が仕事しないからに決まっている。
……さて、私は買い物に行かないと。今日は大事なイベントの日だからね。





「やっぱりサンクさん×お兄ちゃんかしら」



‐END‐

リマは腐女子。
ファミさんちの日常のようなものです。



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