短編 | ナノ
彼らの出会い(レブン×ロー)
背は高い方だろう。華奢という印象はなく、だからといってがっしりしているわけでもない。スラリと細すぎず太すぎずに伸びた身体はバランス良く思えた。
けれど自分よりは少しだけ小さいし、細い。おそらく力もこちらの方が上だろう。
綺麗だ、と思った。
彼が女性的又は中性的な容姿をしているわけではない。ただその真っすぐさが滲み出るような瞳が、どんな女性よりも美しいと思えた。
「……君が今度越してきた子?」
「……」
思わず声をかけると、無言で頷く。
「そうか。俺はレブン。君は?」
「……ロー」
「いい名前だね」
「…………」
それに良い声だと思う。もっと沢山しゃべってくれればいいのにどうやら彼は無口らしい。表情もあまり変わらない。少し不機嫌そうに眉間に皺を寄せている。嫌われてしまったのかと思ったが、どうもその皺は標準装備らしい。
……笑えば良いのに。
笑ったらきっともっと可愛いのに。なんて、男が言われても嬉しくないだろう形容詞を思い浮かべる。
どうしたら心を開いてもらえるだろう。
どうしたら……好きになってもらえるだろう。
(あ、そうか)
(これは……恋か)
不意に思い浮かんだ単語に納得する。そう、これはまるで一目惚れだ。
男同士とか、会ったばかりとか。そんなことは些細な問題でしかない。自分は今、確かに彼が好きなのだから。
「ロー君」
「…………?」
「俺、君のこと好きになりました」
「…………………は?」
驚き固まったローの唇にチャンスとばかりにキスをする。ふに、と柔らかなそれが自分の唇に触れるとそれだけで嬉しくなる。そのまま僅かに開いた隙間から舌を潜り込ませる。しかしローの舌に触れたかと思うと、次の瞬間には突き飛ばされていた。
「アンタ何して……!」
「あ、関西出身?だからあんまりしゃべらなかったの?」
僅かなイントネーションの違いに反応すれば、ローは怒りか羞恥かその両方かで顔を赤くした。
「可愛いのにー」
「か…っ!」
絶句するローの唇にもう1度触れようとしたが、触れる前に突き飛ばされた。
「ね、俺とお付き合いしません?」
「お断りします」
「えー」
しかし諦めの悪いレブンはそれ以来ローに付きまとうようになった。
これが、彼らの出会い――
‐END‐
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