短編 | ナノ


「えっと、アンタここに住むの?」
「……彼女の願いだから」
「ああそう」
「ただ、嫌なら、帰る」

俺が嫌なら帰る? そう言われてもそれじゃあ俺が悪いみたいじゃないですか。全面的に。俺だって大変なのよ。急に天使とか死んだはずの母さんとか母さんが俺を不良にしたいとかあと母さんとか。
「……俺をグレさせるんだっけ。まあ、頑張れば?」
「ああ」
こいつが精一杯頑張ってもテンション変わらなそうなんだけど気のせいかな。まあいいか。
「そういえばアンタ名前は?」
「……鈴(りん)」
「そうか、俺は晴紀(はるき)。まあ、よろしくな」
まずは握手。別に一緒に暮らさないといけないわけじゃないけど、放っておけるはずもないし。本当に天使みたいだし(あれ、これって理由になるのかな)
羽は綺麗だし、もらっちゃったし。羽だけじゃなく顔も綺麗だし。
ああそれにしても黒スーツは天使の標準装備なのだろうか。白い羽がよくはえて良いけれど。
「ハルキ」
呼び掛けられた。
「何?」
「…………」
鈴の言葉より先に、腹の虫の音が響いた。
……俺は違うから、鈴か?
「腹減ったの?」
じゃあ少し早いけど昼飯にしようか。時計の短針は11をさしているから、あまりに早過ぎるということもないだろう。
「天使って何食うの?」
「何でも」

でも肉とかはダメかな。どうなんだろう。
なにはともあれ母子家庭で育った男子の腕の見せ所、ってやつかな。




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