短編 | ナノ


「……美味い」

ホワイトシチューの、一応肉抜きを頬張る鈴。どこか嬉しそうな、少し驚いたような表情をしている。
よしよし。気を良くした俺は自分のシチューを口に運ぶ。まあ上出来、かな。
「ハルキ、料理上手いな」
「結構昔からやってるしね。簡単なのならできるよ」
母さん忙しかったから俺がしっかり家事しないといけなかったし。まあ母さんは自分でやるって言ってたけど仕事で疲れてるのにそんなことさせて倒れたら大変だし。
何より母さんの料理は…………おっと、死者の悪口を言うのはやめよう。
「リンは料理できないんだっけ」
「……インスタント」
「なるほど。まあカップ麺しかできないよりはマシかな」
ついでだから料理の1つや2つ教えてやるのもいいかもしれない。そんなことを考えてしまうあたり俺も世話好きというかなんというか。
「肉も平気?」
「肉、好きだ」
「あら意外と肉食なのね」
肉食の天使ってどうなのよ。人間味があって親しみやすい気もするけど。

「ハルキ」
「何?」
「俺、ハルキのご飯好きだ」
「ありがと」
「毎日食べたい」
「光栄です」
「だから、」
「だから?」




「ハルキと結婚する」



「……はい?」




……天使ってなんかすごい思考回路してるんですね。俺びっくりだよ。
だけど、少し顔を赤らめている鈴を見て、あれこいつ本気なのかなと思ってしまった。
餌付けしてしまったのだろうか。
だけど何より困ったのは、俺がそれを不快に感じなかったこと。


(真っ赤になって可愛いとか)
(本気にするぞコノヤロウとか)
(勘違いだとしても本気に変えてやるとか)


……もしかしてもしなくても、好きになってしまったらしい。




「……とりあえず、結婚は早くない?」
「まずは振り向かせる」
「……頑張ってね」


しばらくは、俺の気持ちは内緒、ということにしようかな。
この天使が頑張る姿を見てみたい気もするし。


‐END‐





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