短編 | ナノ 1日目「愛故に、拉致っちゃいました」



ふわふわのウェーブがかかった栗色の髪の毛。
大きなぱっちりとした目。
フリルのついたドレスを着ればまるで異国の姫のような、お伽話にでも出てきそうな少女。

そんな少女が、柊(しゅう)に言った。


「チョコレート、食べてください」

















目を開くと見知らぬ天井が見えた。
一体いつの間に眠っていたのか。そもそも眠る前は何をしていたのか。思い出そうとすると頭がズキズキと痛みを訴え、邪魔する。

ふと口内に甘い塊が残っていることに気付く。舌でたどってみればそれはチョコレートだとわかる。
チョコレート。そういえば、と喉まで出かかった記憶は扉の開く音に邪魔された。


「おはようございます」


ふわふわの髪。制服のスカートには見覚えがあるような、ないような。
近所の女子高の制服ではないだろうか。そう思うと彼女が口を開く「よく眠れました?」
体を起こそうと動かした腕が何かに邪魔される。チャリ、と金蔵の立てる音が響く。
ここでようやく柊は自分が拘束されていることに気付いた。

両腕には手錠のようなものが、そしてその手錠からは鎖が長く伸びている。鎖は柊が寝かされているベッドの柵に繋がれていた。



「……何のつもりだ」

「愛故ですかねー」


彼女はほんわかした笑みを浮かべてみせる。


「愛故に、拉致っちゃいました」

「…………」

「あ、信じてない」



彼女は少し不満そうに唇を尖らせた。



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