短編 | ナノ
2/12(月)
さて、今日は噂のアミューズメントパークに来ている。
……それはもう混んでいる。
その上バレンタイン前だからかカップルの数が半端じゃない。
あっちでいちゃついているかと思えばこっちでは大喧嘩――これだから男と女は。
半ば呆れながら見ていると朔哉が戸惑った表情で俺を見ていた。
「どうした?」
「………彼女、思い出してんのかと思って」
……彼女?
あ、そうだ別れたって言ったな。
気使ってるんだろうな、一応。
「別に。女なんて面倒だし、男と来た方が楽しいだろ」
これは本音だ。
女っていうのはやれ買い物だやれキャラクターと写真だ、せわしない。それに付き合うのは正直ダルい。
だから何も考えずに遊ぶなら男同士が一番だ。
「あ、お化け屋敷入ろう」
「………」
「何お前下がって………あ、お化け怖いとか?」
じりじりと後ずさる朔哉を見ると自然と笑みが浮かぶ。いい反応だ。
俺は朔哉の手を掴むと無理矢理お化け屋敷へ入っていった。
「ひ、ひ、ヒラオカさん!」
「何?」
「俺待ってるからっ」
「何で?」
朔哉は怖いからとは言えず、口を閉じた。
代わりに凄い目で睨んでくるが気付かないふりをして彼の腕を強く引く。
中は思ったより暗く、注意していないと転びそうだった。
「うまく出来てるなあ…」
それなりに精巧に作られた井戸を覗きながらのんびり歩こうとする俺。しかし朔哉は一刻も早く外へ出たいらしく俺の手を振り払うとずんずん早足で歩いていってしまう。
あんなに早く歩いて転ばないだろうか?
ゆっくり朔哉の後を追うと案の定彼は転んでいた。
仕方なく手を伸ばしてつかまるように示すが、彼はちっとも掴もうとしない。
「どうした?」
「………も、ヤだ」
朔哉は今にも泣きそうな顔をして俺の脛を蹴りとばした。
「――う゛ぐぅ!」
これが痛い。
場所が場所だしその力もまったく手加減のないもので、本当に骨が折れるのではないかと思った程だ。
「…………」
どうにか痛みから立ち直った俺は朔哉を連れてお化け屋敷を駆け抜け、本来の目的であったEコレンジャーショーを見るのだが…
脛の痛みは夜まで続いたのだった。
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