彼はそれを愛と言った | ナノ
トモダチ
「羽村ってさ」
「へ?」
放課後。帰り支度をしていると早々に身支度を終えた野村が鞄を装備した状態でくるりと振り返る。
「帰宅部だよな?」
「そうだけど」
「一緒に帰ろ」
一緒に、帰る?
……あ、イベントか。好感度上げるチャンス。でも攻略方わからないし……とりあえず当たり障りない返事を……
誘ったのなら断られる可能性があるが、誘われたってことは断らなきゃイベント発生で間違いないよな。
混乱してギャルゲーになっている。いやちがうって野村男だし。
とりあえず返事返事。
「喜んで」
いや何か違うって。
「羽村ン家って結構近いな」
「そうか?」
「俺ン家あっち」
野村が指差したのは結構なボロアパート……失礼、昔ながらの趣をもったアパートであった。
結構なご近所さんだ。何故今まで気付かなかったのか……。
まあ俺は高校入学の頃引っ越してきたばかりだから無理もないのか。一緒に帰ったこともないし。
「にーちゃん!」
と、小さな塊が2つほど野村に突進していった。
野村の体がわずかに揺らぐ。が、平気な顔でその塊に笑顔を向ける。
「あ、しょうご兄ちゃんだ!」
「泉、大和、朝日、走るなって……あ、兄さんお帰りなさい」
そういえば弟妹が5人いると言っていったっけ……
ぞろぞろと現れたのはちょうど5人の少年少女たち。
「おー、元気だったか?」
笑いながら妹や弟の頭を撫でてやっている。そんな様子を見ているとやっぱりコイツはお兄ちゃんなんだなと納得する。
「ねーにーちゃん。ソイツだれ?」
「あ、羽村か。友達だ」
「トモダチ!?」
5人がすごく驚いた様子で俺の顔をジロジロ見てくる。なんだ。オタクで悪いか。どうせ外見はあまり良くない。
というかトモダチ……なのか?俺達。
「にーちゃんがトモダチつれてきたのはじめてだな!」
「おにいちゃんをよろしくね、はむらくん!」
「兄ちゃんガッコウでういてないか?」
「兄さんが友達を……小学校以来じゃないかな」
……え、そうなの?
その後さんざん家に来るよう誘われた俺だったが、丁重に辞退させていただいた。
だってアニメ始まっちゃうし。
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