彼はそれを愛と言った | ナノ
３
「へ？」
野村が目を見開く。
俺は弁当を見ながら続けた。
「食欲ない。半分食べるのがやっとだな」
「そ、そうなのか」
「ああ。だが残すのは捨てることになるし、もったいない」
そう言いながら野村を見ると、奴はおそらく無意識のうちに目を輝かせていた。
それを少しだけ……可愛いと思った。
「残り物、嫌か？」
「全然！」
すべてを与えてしまうほどお人よしじゃない。俺に非はない。やつにもない。だから、半分。
今日１日――いや、まだ半日か。友達みたいに接してくれたことへのお礼に。それから餌付けしてしまおうかなんて冗談みたいなことを半分考えた。
弁当は半分だけ食べて渡してしまった。野村はそれを美味しそうに食べる。
「羽村のお母さん料理上手いな」
それ、俺が作ったんだけどと冗談っぽく事実を伝えると野村の目が見開かれた。
「すごいな、お前」
「そう？」
明日は少し多めに作ってこよう。
そう思うくらいには野村の反応に満足した俺だった。
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