彼はそれを愛と言った | ナノ
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「だって持ってきたことないし」
ああなるほど……って違うだろ!
「お前昼メシ食べてないの!?」
「うん」
いや、うんじゃねーよ!素直に頷いたって可愛くないから!
しかもその言い方だと一度も持ってきていないような感じじゃないか。育ち盛りに何て苦行を……。
「……何で?」
「いや、うち貧乏だから」
明るくカミングアウトされてしまった。
「まあバイトして金入れてるけど削れるトコ削らないとダメだろ?」
昼メシは削れるトコじゃねーよ。
突っ込みたかったが、できなかった。
何故なら、野村は素直にそう思っているみたいだったから。
俺は、自分も空腹なのに、空腹だと訴える人間を可哀相と思っている持っている食料をすべて与えてしまうほどお人よしな人間ではない。
当然だ。腹が減るのはお前だけじゃない。貧乏はお前が悪いわけではないだろうけれど、うちが貧乏でなくてどちらかというと裕福と言えなくもない家庭なのも俺が悪いわけじゃない。
なのに、罪の意識を感じる必要はないはずだ。
腹が減るのはお前だけじゃない。
腹が減るのは俺だけじゃない。
お前は悪くない。
俺も悪くない。
だから、
「……食欲ない、な」
そう呟いた。
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