彼はそれを愛と言った | ナノ


連絡事項もなかったのでホームルームはすぐ終わった。
ただ1時間目が始まるまでにあまり余裕がないので、ガタガタとクラスメイトが席を離れる。

俺ももう行くか、と立ち上がる。
と、野村が振り返った。


「もう行く?」
「あ、うん」

教科書とノート。それから筆記用具を手にした俺を見て野村は少し慌てたように「待って」と口にした。
どうしたのかと不思議に思っていると野村は急いで鞄から教科書・ノート・筆記用具の3点セットを取り出した。そして俺を見ると、「悪い、行こう」と言った。

「……ん」

一緒に?と聞いて違ったら恥ずかしいので曖昧に答えておく。
俺は教室に施錠する鍵当番ってわけじゃないし、教室がわからなくたってクラスメイトについていけばたどり着けるだろう。それを待って、一緒に行こうなんてこと、あるはずがない。
けれど野村は当然のように俺の横に並んで歩く。

「羽村ってさ」
「…何」
「兄弟いる?」
「いや」

なんで話しかけてくるんだろうか。

「そっか、俺下が5人いるんだ」
「……5人?」
「小2が2人と小1、小4、中3が1人ずつ」
「……大変だな」
「んー、楽しいぞ」
「お前長男なの?」
「おう」
「ふーん」

たしかにお兄ちゃん、という感じがするなと思う。


「……野村、さ」
「んー?」
「なんで――」

――なんで俺に近づくの?


出かかった言葉を飲み込む。


「なんで、いつも寝てんの?」

代わりに前々から抱いていた疑問を口にする。


「眠いから」


あっさり返ってきた言葉に「じゃあ今日は眠くないのか」とか「なんでいつも眠いんだ」とか思うより先に、笑ってしまった。

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