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ヨン竹シリーズ‐2‐ [ 183/196 ]

気にくわない男だと思っていたのだけれど、一緒に酒を飲んだとき、そうでもないのだと思い始めた。


ホ・ヨンファという男はひどく子どもっぽいのだと思えた。
執着心だとか、拘りは幼い少年のそれとよく似通っていた。


だが…





竹中は首筋の赤い痕にため息を吐いた。


「…いったい何なんだ」


理由がわからない。
勿論竹中はヨンファが自分を『そういう対象』として見ているなんて夢にも思っていないわけで、だから嫌がらせだろうかという程度にしか思えていない。








「あ、キスマーク!」



大声に驚いて振り返ればそこにいたのは菊政克美。『いそかぜ』よりも現世に入り浸っている。



「相手は誰なんスか?」

「あ、相手?」

「艦長スか?あ、艦長の息子さん?もしかしてヨンファとか…え、マジですか!?」



口早にまくし立てられて混乱のあまりつい答えてしまう。しかし…キスマークではないだろう。



「いや、これはただの嫌がらせ…」

「いいな〜俺も先輩につけてこよっかな…」

「先輩?…ああ、如月のことか」




でも何で、と聞きかけた竹中を遮るように話し続ける。





「やっぱりさ、いいッスよねキスマーク。『俺のもんだ』って印ッスよ?先輩に近づく奴等…先任伍長とかに牽制できるし」

「『俺のもんだ』…?」

「ヨンファもそういう意味でつけたんじゃないッスか?だって副長狙われすぎだし…」



放っておけば延々と続きそうになる菊政の声も、もう竹中には聞こえていなかった。



――『俺のもんだ』って印ッスよ?





…おれは物じゃない




竹中は複雑な気持ちで赤い痕を見つめた。




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