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忘れ物(宮竹) [ 181/196 ]

昔から海にばかり行っていた宮津は、息子である隆史と話す機会が殆どなかった。

だから、偶には二人でゆっくり話そうかと考えたのだ。





「それで、どこに行くのがいいと思うかい?」

「艦長、それなら菊政に聞いた方がいいのではないでしょうか。年も近いし…」

「それもそうか」

「あ、でも」

「でも?」

「艦長と居られればそれでも十分だと思いますよ?」



竹中はそう言って笑うのだった。





結局決まったのは自分たちの墓に行こうということだった。妻のことも…心配ではあった。こちらにはいっこうに姿を見せないから元気でやっているのだろうけど。
無事だと思うかい、と聞くと竹中は少しだけ悲しそうな顔をした。


「きっと、ご無事ですよ」





特に何が必要、というわけでもなく、持ち物なんてない。この身一つで十分だ。
隆史とともに現世に行こうとしたその時、








「艦長、お忘れ物です」





竹中が、宮津に声をかけた。




「…?…忘れ物なんて…」








次の瞬間、柔らかな感触が唇に触れる。

どこの新婚夫婦だ?


だけど、悪くない。


触れた唇は微かに震えていて、一瞬だけ合わさってすぐに去っていった。
そして目の前に残るのは、真っ赤な竹中の顔。





「ああ、たしかに忘れてた」




今度は自分からもう一度キスをして、それから微笑んだ。



「いってらっしゃいのキスといってきますのキス」






―end―



特に理由はないんですが…「忘れ物」ってきくとついやりたくなりました(^ヮ^;)
ベタ甘な二人を目指したつもりなんですけど、なかなか…

竹中×宮津でも通用しそうですね(笑)


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