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さようなら(ヨン→竹)※死ネタ [ 129/196 ]
「いつかはこうなると思っていましたよ」
銃を向けて、言った言葉はやけに遠くで聞こえた。
残念だ。そう思う自分が居た。
竹中 勇
少なからずも気に入っていたのだと、言ったところで誰も信じないか。
たとえばその目。
肉食動物に刃向かう哀れな小動物、といったところか。
全身全霊をかけて嫌って、逆らうその様子。
見ていて楽しかったのだが…
残念だ。せめてこの手で殺してやろう。
竹中は此の期に及んで宮津を振り向く。
そんな清々しい顔は、一度だって自分に向けられたことはない…
少しだけ、頭を過ぎる言葉。
――もし、あなたが宮津でなくおれを選ぶというのなら、生かしてやってもいいのに…
馬鹿げたことだ。首を振って、竹中の言葉に耳を傾ける。
…そう、決して自分を選ぶことはないと再確認させる言葉。
あなたは、宮津を選ぶ。そして、死ぬ。
言葉の終わりと共に、竹中の銃から銃弾が撃ち出された。肩を抉る。
あなたがおれに与える最後の痛み、ということか。
イルジュンの銃が竹中の背に…
もう、助かるまい。
おれはあなたの心臓を狙撃した。
最後まで宮津を想う竹中の死は、ひどく苛立たしいものだった。
ドンと来い、100のお題
094:さようなら
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