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拾い猫(ヨン竹、猫化)* [ 128/196 ]
それに気づいたときの竹中の顔ときたら、傑作だったと思う。
――拾い猫――
ヨンファの手には、小瓶があった。
その中には透き通った桃色の液体が入っている。
『人を猫にする薬』
それはどうせ風聞にすぎないだろうと思いながら、彼は思ったのだ。
人である竹中を繋ぎ止める術はない。しかし、猫ならどうだろうか。
猫ならば、完全なる闇の中に閉じこめておける。
性的な行為だとか、そんなことを超越して何よりも彼を縛り付けておけるかどうかが問題なのだった。
そこまで考えて、ヨンファは嗤った。
本当に効くわけがない、と。
絶望的な顔をしていた。何故かはおおよそ、予想がつく。
そしてそのきっかけ――というか原因か――を与えたのは、他ならぬ自分である。そう考えると自然、笑みがこぼれてくる。
ありえないことが起きた。
竹中の頭部に、猫の形状をした耳が生えている。また、確認はしていないが尻尾も生えている。
しかしそれは決して有り得ないことではないのだと、ヨンファは知っていた。
何故なら、竹中をそういう状態にしたのは他ならぬヨンファであったからだ。
「どうしました?」
竹中は泣きそうな表情でヨンファを見た。勿論、ヨンファのせいだとは知りもせず。それはどこか頼りない、助けを求めるような、そんな目だ。
「大丈夫ですよ」
優しく、優しく、
耳元で囁いた。
大丈夫。
おれだけはあなたの味方でいてあげますから。
竹中は安心したように彼に抱かれていた。
その日、《いそかぜ》から二人の男が姿を消したのだった。
ギシリ、とベッドが軋む音がする。
ベッドには影が二つ。一人は男で、もう一人も男。汗が伝い、シーツを濡らしている。
窓の向こうには細い三日月が見えていた。
「竹中さん」
ヨンファが口を開く。その頬にはごく僅かではあるが汗が伝っている。
竹中は躯をピクリと震わせるが、朦朧とした様子で視線を漂わせている。
それが面白くないのか、ヨンファは竹中の頭部に手をやった。髪とは明らかに違う感触の毛で覆われた、獣の耳を撫でる。
「………ぁ、……」
吐息と共に僅かに漏れた声に気を良くして、ヨンファは口元に笑みを浮かべた。
竹中の其処には欲望が深々と突き刺さり、その淵からは白く濁ったものが溢れ、腿を伝っていた。
その少し上から生えている尻尾を徐に掴むと、先ほど竹中の自身にした時と同じように優しく撫で、扱く。それは竹中にしっかりと行為を連想させたようで、同時に自身が震えた。
「尻尾と、どちらが気持ちいいですか?」
「………っ…」
竹中は無言で首を振る。しかしヨンファはそれを許さず、吐息をかけるように耳元で囁いた。
「言ってくれないと、わかりませんよ?」
尻尾、と
消え入りそうな声が聞こえた。
「よくできました」
頭を撫でる代わりに其処を撫でてやった。
半分だけ猫、というのは随分と都合が良い。
本物の猫は外に出てもおかしくないが、此方は外に出れば明らかに異質の目で見られる。
と、なれば内に籠もるのは必至。
だが、しばらくすれば戻ってしまうかもしれないなと思いながら、
今日で三日
戻らなければ一生このままでも良いし、戻るならばその前に身体に言い聞かせておけばいい。
この拾い猫は飼い主から逃れることはできない、哀れな、自由を奪われた猫。
―END―
ヰ鶴様遅くなりましてすみません!
というかこれ微えろですかね;えろではありませんね確実に。というか「微」だきっと(違)
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