版権 | ナノ
口直し(ヨン竹)* [ 127/196 ]
趣向を変えてみましょうか、とヨンファが言った
竹中は頷きもせずにただ相手を見返していた
部屋には独特の香りが立ち込めていた。カカオの香りと、情事の匂い。それから互いの汗。
「いいですよ……そう、舌を絡めて」
優しく髪を撫でられ、さりげない力を込められる。竹中の口内にはヨンファのものが、我がもの顔で居座っていた。未だ苦味はなく、それどころか甘い。
……と、いうのもヨンファのものにはチョコレートが塗られていたからである。
「…変、態……っ」
噛まないように、注意して吐いた悪態にヨンファの顔が歪む。
最初はべっとりと塗られていたチョコレートも、時間が経つにつれて溶けて口内へ溢れていく。吐き出すこともできずに飲み込むと胃にもたれるような違和感を感じた。
ようやくチョコレートを舐めきると、露になったヨンファのそれから苦味が溢れた。
それでも解放する気はないらしく、苦味に耐えてヨンファに従う。口をすぼめろだとか、歯は立てるなだとか、お前は何様だ、と思いながらも従った。
「……もう、いいですよ」
このまま口に出されるのかと身構えていたため、拍子抜けしてしまう。
口内に残る苦味に顔をしかめていると、ヨンファが口づけてきた。
――ストロベリーの味が広がる
何故かと疑問に思う前にそれがヨンファの口に含まれていたチョコレートだと気づく。普通のチョコレートより幾分すっきりとした甘さが口内に広がる。
「口直し、です」
そう囁いたヨンファの口が首へと近づいていくのを見ながら、ああやっぱり続きもするのかと思いつつその背に腕を回した。
‐end‐
配布期間 2006.3.5〜4.5
[*prev] [next#]
TOPへ