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昼下がり(仙行仙、パロ) [ 123/196 ]





この筆が、

何かを生み出せると思っていたのだ


きっと勘違いでしかなかったのだろうけれど








「あ、」



突然の風にスケッチブックが捲れ上る。折角描いていた絵だったのだが、絵の具がベットリと付着してしまい、何が何だかわからなくなってしまう。
最悪だ。ため息を誤魔化すことはできず、仙石は諦めたように寝転んだ。

公園。それも芝生の上に寝転んだ、中年の男。傍からみればそれはリストラされた会社員にしか見えないのだろうか。
そう思うと自然と笑いが込み上げてきた。


その通りだった。



「馬鹿らしいよなあ」



自分には、才納があるなどと思っていたのだろうか?
本当に馬鹿らしい。


ただ、好きに絵を描くことしかできそうになかったのに、それさえも上手くいかないだなんて
本当に馬鹿らしい。


渇いた笑いは自分から人を遠ざける。
それでも良かった。
その方が良かった。


それでも、彼はここで絵を描くことを止められなかった。

期待していたのだ。
誰かが、自分の絵を見て、たった一言言ってくれるのを。

上手いですね、なんて嘘はいらない。ただ、好きですと言ってくれるのを。


待っていたのだ。







「絵、もう描かないのか?」



ふと視線を上げれば見覚えのある顔。
そういえばここ数日、公園に来るたびに彼がいたような気がする。しかし声を聞くのはこれが初めてだ。


「今日は、もう描かない」

「何だ……」


彼が残念そうに肩を竦めるのを見て、仙石は不思議に思う。

けれど、疑問はすぐ解けた。




「おれ、あんたの絵好きなのに」







この筆は

この手は


何も生み出すことは出来ない


それでも好きといってくれる誰かが居るのなら、たぶん描き続けるのだろう。








―END―


特に意味のない、パラレルのようでいてよくわからない話
仙石さんはリストラされた会社員。如月はまあ何でもいいよ(おい)

続くということはおそらくない
久々に書いたのがこれって……


2006.07.25


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