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帰ってきた赤頭巾(宮VSヨン→竹、童話パロ) [ 121/196 ]



※如月受けにあるものから続いているようで単品でいけそうな話



宮津さ……お婆さんのお家の隆史君は先日、交通事故でなくなってしまいました。それを聞いた竹中さんはううんと唸ります。

「わたしには彼に合わせる顔がありません。どうか、代わりにこれを持っていってください」

そう言ったのはその経緯を話してくれた渥美さんです。ちなみに隆史君を車で跳ねた、正にその人です。竹中さんはまたも唸りながらそれを受け取りました。
お見舞いには付き物の、ワインです。


「あ、この辺は狼が出て危ないから、狼に遇ったら『赤頭巾』と名乗るように」


その名前なら竹中さんにも聞いたことがありました。
何でも、血に塗れたその姿は赤い頭巾を被っているように見える。そんな恐ろしい青年のことです。
最近その噂を聞きませんが、そっちに遇うのも問題のような気がします。

それでも竹中さんは言いつけを守るタチなのでここからは赤頭巾として話を進めて行きます。











「退屈だ。GUSOHでも使うか」


どこまで本気なのか、狼が呟きます。彼は北朝鮮からやって来た何か凄い狼です。何せ恐ろしい兵器を持っていますから、凄い狼なのです。

で、その狼は退屈していました。あまりに退屈なので兵器を使おうかとも思いましたが、それはさすがにやめておくことにしました。
兵器を使うことでここがどんなことになろうと狼には関係ありません。しかし、それをすると更に退屈そうだったのでやめたのでした。


そんな訳で、彼は冗談としてその言葉を呟くのです。



「退屈だ。GUSOHでも使うか」


でも同じ言葉の繰り返しだと頭の弱い人みたいですよね。

……やーい馬鹿



「………GUSOH使うか」



ごめんなさいごめんなさいっ!!




あ、そんなこんなで竹中さん……赤頭巾がやってきました。

赤頭巾は花畑で花を摘んでいます。一寸というか、だいぶミスマッチです。
いい年した男がお花摘み、正にミスマッチです。


が、狼はそれを見るとご機嫌で赤頭巾の先回りをしにいってしまいました。









さてさてここはお婆さんのお家。お婆さんは今か今かと赤頭巾を待っていました。
何で知っていたかというと、赤頭巾を見舞いに寄越せと命令したのはお婆さんだったからです。うん、納得。

勿論この物語が赤頭巾だということも忘れてはいません。狼がいつ来ても大丈夫なようにしっかりフライパンを構えています。
絵的にはあまり宜しくありませんが、残念ながらお婆さんは猟銃なんて持っていませんでしたので仕方のないことです。


――ぴんぽーん


誰かが来たようです。

お婆さんがフライパン片手にドアを開けると、そこには狼がいました。



「……………」



両者、無言の睨みあいが続きます。
無言ですがどちらの目も口より雄弁に物を語っていました。

――放送禁止用語ばかりなので教えることはできませんが。



「…………」



とりあえず二人とも「赤頭巾は自分のだ」と言い争っていました。口には出していませんが。

いい年した男二人が同じくいい年した男取り合ってどうするんですか。




さて、二人はドアを開けたまま、狼はドアの外、お婆さんは家の中から一歩も出ずにそれをしていました。ので、その様子は外から丸見えです。
動物たちはその異常な空気に怯え、赤頭巾に止めてもらおうと助けを呼びました。

それが聞こえたのか聞こえなかったのか、我らが赤頭巾の登場です。



「……ん?」


赤頭巾は首を傾げました。お婆さんは何だか元気そうですし、狼と熱い視線を交合わせています。
とりあえず元気ならお見舞いなんて要らないだろうと思った赤頭巾は、そっとその場から二人の様子を覗きました。

そして、納得したように手を叩きます。



「…邪魔しては悪いな」




二人が聞いていたら露骨に顔を歪めたであろう言葉。それを呟くと赤頭巾は元来たみちを帰って行きました。


帰って来た赤頭巾は渥美さんにこう言いました。


「二人の邪魔をしてはいけないので、お見舞いは今度にしておきます」



いつものように清々とした笑みに、渥美さんは首を傾げました。








二人が赤頭巾の来ないことに気づいたのはもっと後のことでしたとさ。










―END―

2006.07.27


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