版権 | ナノ
赤頭巾と狼のその後(仙行仙、童話パロ) [ 120/196 ]
赤頭巾は結局ヨンファを倒せなかった訳ですから、家に帰りづらくなってしまいました。
それに赤頭巾としては家に帰るよりも狼とずっと一緒に居たかったので、二人は森で暮らすことにしました。
そんな二人の日常を、一寸だけ覗いて見ましょう。
「恒史」
「何だ、行」
「筆がなくなった」
赤頭巾が困ったように首を傾げ、狼に言います。
どうやら赤頭巾たちは毎日毎日絵を描きすぎて、すっかり筆をボロボロにしてしまったようなのです。
「そりゃ大変だ。買いに行くか?」
「いや、それよりちょっと向こうを向いていて欲しい」
赤頭巾はそう言うと狼を壁向きに立たせました。
人を疑うことを知らない狼は何の疑問も持たず、赤頭巾の言葉を待ちました。
しかし、刃物の立てるような、チャキッという音がして身を震わせます。
「こ、行? 何か金属音がしたんだが…」
「あんたのベルトが何かにぶつかったんだろう」
「悪寒がするんだが…」
「風邪か?」
「鋏っぽい音がするんだが……ってお前なにしてるの!?」
「ちっ」
「ちって言わない!!それ仕舞え!!」
赤頭巾が渋々鋏を仕舞ったのを確認すると、狼は深くため息を吐きました。
「どういうつもりだったんだ…」
「尻尾の毛で筆を作ろうかと」
「………」
どうやらここの赤頭巾は狼よりとっても強い人なようです
おっと、名残惜しいですがもう時間です。
狼の尻尾の運命は今度代わりに聞いておきますね。なに、大丈夫ですよ。
赤頭巾は狼が大好きですからね。
「大丈夫だ、すぐ生えて来る」
「やめろ!!」
………たぶん、ね。
―END―
2006.07.26
[*prev] [next#]
TOPへ