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きっかけ(リーグルワーズ×クラウ、学園物) [ 110/196 ]
それは、授業中の一コマ。
ふとクラウが隣の席を見た。そして首をかしげ、それからまた黒板を見る。
黒板に書き込まれた数式を見て額に皺を寄せる。
溜め息を吐いていると隣から伸びてきた手がクラウの机上に置かれたノートの上に丸めた紙を落とす。
あまり気が進まないが開いて見てみれば、それはノートの切れ端だった。中には大きな字で
『好きだ』
の文字。
いつものことだ。
クラウはまた黒板に目を向け直した。結局その数式を見ていると頭痛しかしないのだが。
クラウの隣にいるのはレファル・エディア。生徒会長で、男で、それから何故かほぼ毎日こんなことを繰り返している。
レファルは黒板など見向きもせず、ニコニコとクラウを見つめている。
と、その時
「エディア会長、何をしてらっしゃるんですか?」
静かな笑みを浮かべながらも怒りを帯びた声。リーグルワーズ…リーズに間違いなかった。
「何だよ。また邪魔しに来たのか」
「どう見ても見込みはないようですが?」
「刺激的でいいだろ?」
やはり二人は黒板など見向きもせずに会話を続ける。クラウはそれでも黒板を見て、頭痛のする頭を押さえながらノートに板書をし続けた。
「またお前達か」
数学教師の声が聞こえてきた。呆れたような声だ。
これで何度目だろう。そう思いながらクラウは隣の二人を見る。レファルは生徒会長。リーズは副会長。
だが、この学校ではなく、隣の学校の生徒だった。
「だいたいお前のせいで俺まで毎日毎日サボる羽目になってるんだぞ!!いいかげんにしろ!!」
「ならついてこなきゃいいだろ!!」
「先生から頼まれてなきゃ誰がついてくるか!!」
こうして授業を潰してくれるのだけはありがたい。そうは思えどあまり嬉しい状況とは言えない。
「いいから戻るぞ!!」
リーズがそう言った瞬間、その日最後の授業が終わった。
※※※
「疲れないか」
クラウは傍らのリーズに聞く。帰る方向が同じで、だからバス停で並んでいた。
よくある偶然。
「何が、ですか」
「会長のお守り」
「疲れない、と言ったら嘘になるでしょうね。あなたが一言面と向かって『大嫌い』とでも言ってくだされば少しはこたえると思いますけど」
「あ、そっ」
特に考えもせずに聞き流す。
自分で聞いておいてなんだが、これといって興味ない。
「あ、でもアイツが来ないとお前も来なくなるんだよな」
「?そりゃあ……」
「ちょっと、寂しいかもな」
ほら、授業潰せなくなるし。
そう言ったクラウにリーズの顔が真っ赤になる。それを見てクラウは不思議そうに首をかしげた。
「どうかしたか?」
「いえ……何でも」
それから、少しだけリーズがクラウを追うようになったのはまた別の話。
―END―
どうせやるならもの珍しいものを…なんて思ったりして(笑)
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