版権 | ナノ
ワナ(ルークラ、学園物) [ 109/196 ]
「好きだ」
顔を赤らめるでもなく、いつもと違った表情を見せるでもなく、ただ『事実』を淡々と告げるように、ルークは言った。
クラウは何と答えれば良いものか、そしてどんな反応をすれば良いものかもわからず、ただ呆然としていた。
いや、ショックだったのかもしれない。
仲の良い幼なじみだと信じてきた男に、突然の好意を告げられて。
いつから、どうして、男同士でそんな、
いくつもの疑問は声に成らなかった。
ワナ
「……あのさ、」
ようやく疑問の1つをを投げ掛ける余裕が出て来たクラウは、長い長い沈黙を破った。
けれど、次の言葉が音に成る前にルークの言葉が響く。
「答えは要らない」
それだけ言うと彼はくるりと背を向けて歩き出した。そこには告白の後の甘い空気も動揺も、あっさりするくらい何もなかった。
答えは要らない。そうか答えは要らないのか。
「……なら、言うなよ」
それなら最初から何も言わなければいいのに。そうすればこれまで通り何も考えずにいられるじゃないか。
うだぐだ考えるのは嫌だし、関係が変わってしまうのも嫌だ。だから、言わないでくれたら良かったのに。
……いや、きっと知っていて欲しかったのだろう。他の誰でもない、クラウに。
そんなことはわかっていたけれど、それでも文句を言わずにはいられない。
さあ、明日からどうしようか。
これまでクラウの何気ない態度にルークが傷付いていたのだとしたらそれは嫌だし、だからといってどうすればいいかわからない。
いや、あの男はそんなにやわじゃないとは思うが……それでも、そんなことで傷付くことがあって欲しくない。
さあ、明日からどうしようか。
***
――翌日。
クラウは昨日の自分を後悔していた。
(何でアイツは嬉しそうにチョコ貰ってるんだよ!?)
女子生徒が顔を赤らめてチョコレートを渡している場面。渡す相手はもちろんルークである。
にこにこと普段通りの笑顔でそれを受け取るものだから女子生徒は勘違いして嬉しそうに笑っている。
……馬鹿か。
アイツは誰に対してもあんな感じだぞ?
いや、毎年のことだから文句を言っても仕方がない。それに文句を言う権利なんてクラウにはありはしない。
『お前昨日俺のこと好きだって言ったよな!?』じゃ完全にヤキモチだ。ホモの痴話喧嘩だ。
でもそういうのって『好きな人がいるから』って断るものじゃないだろうか。いやだからこれじゃあヤキモチだって。
……ふと、馬鹿なことが思い浮かぶ。
もしも、もしもだ。
もしもクラウがルークにチョコレートを渡したら、どんな反応が返ってくるのだろうか。
きっと心から嬉しそうにしてくれるはずだ。作った愛想笑いなんかじゃない、本当の表情を見せて。
いや、そんなことしたって傷付けるだけだ。だってクラウはルークを好きなわけじゃない。
でもそれでルークが喜ぶなら良いんじゃないかと思ってしまう。
愛想笑いをしているルークは、好きじゃなかったから。
***
いつも帰り道が一緒になるのは偶然か必然か。
やっぱり必然だったんだろうな、と思いながら前方を歩いていたルークに声をかける。
「よ」
「ああ」
ルークが昨日のことなんてなかったような反応を見せるから、少しだけ腹がたった。
「お前意外とモテるよな」
「そうか?」
隣を並んで歩くのが、久しぶりに感じる。
昨日も並んで歩いたばかりなのに。
「付き合えばいいのに」
可愛い娘だったし、と続けてから気付く。だから、これではヤキモチだ。ホモの嫉妬だ。
慌ててルークを見れば、ルークは泣きそうに微笑んでいた。
ああ、これが無意識に傷付ける瞬間だったのか。
「…ごめ、」
「付き合おうかな」
「……は?」
「付き合おうかな、って言った」
……この男は今なんて言った?
「……好きでもないやつと付き合う気かよ」
「最初はみんなそんなものだろ。付き合っているうちに、好きになるかもしれない」
「相手の娘に失礼だ」
「でも、仕方がない」
淋しそうで淋しそうで泣きそうで。
無意識のうちにそんなルークの胸倉を掴んで、引き寄せて、
怒鳴った。
「俺が絶対お前を好きにならないって誰が決めたんだよ!!」
悪戯が成功した悪餓鬼のように微笑んだルークを見て、ああ、もしかしてこれはこいつの作戦だったんじゃないかと気付いたけれどもう後の祭り。
‐END‐
難産だったんですが携帯に切り替えたら意外とすんなり書けました。
二人とも偽物すぎますが……
文もめちゃくちゃですが……
08.03.05
[*prev] [next#]
TOPへ