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ベッド(ルークラ) [ 106/196 ]


ベッドの上の布団が不自然に盛り上がっていた。それを見、ルークは溜め息を吐く。

これでは例の忌み破り…ライナ・リュートと同じではないか。ある種の皮肉を込めて、ルークはそう思うことにした。

疲れているのだろう。慣れない仕事…それも彼の苦手とする書類ばかり押し付けているとシオンは言っていたから。



「クラウ」

「…ん……」



名前を呼ぶと布団が僅に動いた。それからうなされる声。
本人からしてみれば真剣なのだろうが、第3者からしてみればつい笑ってしまう。クラウは『書類…』といううめき声をあげていた。

ルークは思わず笑い出して、布団の上に軽く力を込める。おそらくは顔の辺り。



「……む、……ぐ!!?」



酸欠になったのか、もごもごとした音を出し始めたクラウの上から、とっさに体を退けたのはもう慣れとしか言いようがない。
次の瞬間には宙を舞う布団を見てルークは苦笑したのだった。



「おはよう」

「………」


未だ覚醒しきっていない目がルークへと向けられている。紅の髪は少し寝癖が出来ていた。
クラウはしばらく瞬き一つせずにルークを見ていた。だが、大きく開かれた目が次の瞬間にはスッと細められる。


「……ルーク」

「何だ?」

「死にかけた」

「大丈夫大丈夫」



それより、とルークはクラウに近づいてベッドに腰掛けた。

まだベッドから体を起こしただけの状態のクラウは、ルークの行動を窺っていた。



「なあ、元帥は大変か?」

「…書類地獄だ」

「ちゃんとやってるのか?」

「まさか。部下にやらせてる」

「ふーん」




ルークの片眉が持ちががるのに、クラウは気付かない。すねた様に唇を尖らせている。



「…お前が居ればこうならなかったのに」

「俺が恋しかった?」

「んなわけあるか」


だが、クラウの頬には赤みがさしていた。それを見て、ルークの機嫌はいっぺんに直る。



「添い寝は要るか?」

「もう起きる」

「いいだろ。もう少し」



たまに一緒に居られる時くらい、と囁かれれば、クラウも仕方なさそうに布団に潜り込んだ。




五分後にシュスがやってくるまで、二人は目を閉じていた――

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