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初雪(バユクラ、学園物) [ 104/196 ]

通りで寒いと思ったら


一面の、雪






「……寒…」


バユーズは目が覚めてからずっとこんな調子だった。時折ガチガチと歯を震わせて、厚手のコートの下には同様に厚手のセーターを…

二枚


もう一日早ければ。そうしたらこんな思いをして道を歩かずにすんだのだ。ただ、日ごろの行いもいい筈なのに、今日はくしくも始業式。
どうせ長い長い『校長先生のお話』とやらを聞くだけなのだろうに。たかだかそんな事のためにこんな雪道を歩くなど、馬鹿らしくて仕方がない。


口元までマフラーを巻きつけて、もう殆ど意地になって歩く。本当ならすたすたと歩きたい所なのにそれすら叶わない。



ようやく校庭にたどりつくと、一人の男が走り回っていた。



(犬は喜び庭駆け回り、か)



呆れたようにため息を吐く。
白い息が空中に吐き出されて、消えた。


見ればその男――クラウは上着を脱いでおり、ワイシャツ一枚になっていた。
まず間違いなく風邪をひくだろうその格好でいるということは、自分が馬鹿であると認めているということだろうか。『馬鹿は風邪ひかない』ということだし。


「お、バユーズか」


こちらに気づいたのか、手を振る。
バユーズは呆れながらもクラウを見た。

ちょうど太陽を背にしているクラウ。その灼熱のような髪は太陽の光を浴びていて、本物より本物らしかった。


「お前…寒いの苦手?」



同情したようなクラウの声。バユーズはムカッとしてコート脱いだ。着ていた二枚のセーターも脱いでしまう。


それから、



「ぶっ…なにしやがる!!!」



クラウの顔に雪玉をぶつけた。



「危ないだろ…」



そう言ってクラウも雪玉を投げ返す。






二人の雪合戦は飽きるまで続けられ、その後『どちらの方が大きな雪だるまを作れるか』に勝負が変わったという。





初雪だったなんて、しみじみ感じる余地もない、だけど不覚にも楽しかった新学期初日だった。




―END―


‡配布元:銀ノ弾丸
‡URL:http://pksp.jp/silver-bullet/
10題1


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