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夢の中でもう一度(ラフライ) [ 58/196 ]
夢を見る
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そしてそれは決まって悪夢
「僕は本当にあなたのファンになったんですよ?」
ラフラがそう言って微笑むと、ライナは顔をしかめた。お世辞ですら言われたことがなかったのだろう。微かに朱色なった顔を盛大にしかめると、ラフラを睨む。
「何で…」
「あなたは優しい」
あれほどの悪夢を見て、それでもなお人を信じようとする彼が羨ましいと思った。そして同時に哀れとも思った。
信じて、裏切られて、それでも信じて……
そしてまた、裏切られる。
いっそ憎めたら楽なのではないか。でも、ライナはそれをしない。
絶望して
絶望して
絶望して…
それでも信じたがるライナは本当に哀れなのだろうか?
ラフラが見たライナの夢は救いようのない悪夢だった。
人を信じて、それ故に裏切りに傷つき
それでも人を好きでいる
「…悪かったな」
「え?」
「俺の夢なんて何度も見させて……偶にはいい夢見りゃよかったな。昼寝する夢とか夕寝する夢とか朝から晩まで寝続ける夢とか」
「…夢の中でも夢って見るんですかね?」
「さあ?」
ライナはラフラに謝った。普通、怒るはずなのに。謝るのはラフラなのに。
どうしてこの人はこんなにも優しいのだろう
「本当に優しいですね」
「…だからやめろって」
夢の中でどれだけ願ったか、あなたは知らない。ずっとずっと会いたかった。あの夢の持ち主。
ただ、一つだけ心残りがあるとすれば
あなたの笑顔を見ていない
いつも浮かべるのは悲しみを残した苦笑いや、困ったような微笑。
決して自分に心からの笑みを浮かべることはない。ラフラだけでなく、他の誰にも。
それを可哀想に思うけど、それでいいとも思う
もし、死んでも夢を見るのなら、あなたの夢を見よう。
あなたの見る悪夢がいつか良い夢に変わるのを見届けるためにも
だから、悪夢ばかり見られるのも少し困る
そう考えながら眠りに落ちていった。
―END―
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