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さようならの準備(シルライ、学園物) [ 56/196 ]
※学園物で卒業ネタ
「じゃあな」
だから練習する。
いつかしなければならない別れの挨拶の。
卒業式は三月の初め。
数えたくないのに数えてしまうのは、その日を望んでいないからだろう。いや、望んでいないからだ。
「………」
シル。あれの本名は何と言うんだったか。あの長ったらしい名前をした、彼が、ライナに近付いてくることもなくなる。
卒業式を終えれば全てはライナがシルと出会う前に戻る。ぽっかりと、その期間だけは穴が空いたようになるけれどそれは些細な問題にすぎない筈だった。
静かな日常。
シルに振り回されることもなくなる。いつまでもいつまでも眠っていたって、起こされることもないだろう。
それはライナがずっと望んでいた平和な日常で、幸福だった筈だ。
けれど何故かライナは卒業式までの日を数えたくなくて、四月からを想像したくないと思った。
――訳がわからない。
卒業式の後に、彼らの接点は失われる。だからその後に会うこともない。理由もない。
それが寂しいと思うのは、そのわずわらしさに慣れてしまったからなのだろうか。
ライナが目を覚ました時、辺りはもう薄暗かった。
ううんと伸びをした後に時計を見ればもう、五時近い。
「……は?もしかして、俺、寝てた?」
しかしいつもなら四時頃にシルが起こしに来て、一緒に帰りましょうと五月蝿く言ってくるのに……。
そこまで考えて思い出した。そういえば彼は委員会があるから先に帰っていてくださいと言ってたっけ。
そしてその委員会が終わるのは、五時。
「うわ……何か待ってたみたい?」
でも、たまには迎えに行くのも悪くないかもしれない。
そう思ったのは眠る前にくだらないことを考えていたからか、それとも四月からはこんな風に誰も起こしに来ないのだと気付いたからか。
きっとシルは喜ぶだろうし、その表情を見るのも嫌いじゃない。
だから、気まぐれだ。
(どうしよ、四月から)
深く考えたわけではなくてなんとなく浮かんだキモチ。
(アイツはいなくなって、俺は静かな毎日を手に入れて、それから……)
(それから……)
「あ、ライナさん!?――もしかして待っててくれたんですか!?」
「……………まあ、な」
(それから?)
――馬鹿らしい
変わらないじゃないか。これまでと何も。
「じゃあな」
この分かれ道での別れの言葉が長いものにかわるだけで、
「あ、暗いし、送ります!」
「別にいい。じゃあな」
じゃあな、と
卒業式の日も言うだろうか。
どんな風に?
わからないけど、きっとこの瞬間みたいに、寂しいんだろうな。
―END―
………駄文スミマセン…
久しぶりにシルライが書きたくて書きたくてたまらなくなり(しかも嬉しいことを言われたものだから調子に乗って余計に書きたくなって)
卒業ネタも書きたくて、ついついパラレルに。
卒業するのが誰なのか、明確にはしていないつもりです
ライナかもしれないし、シルかもしれないし、二人かもしれない。
敢えてそういう書き方をした……つもりなのですが上手くいきませんでした(汗)
駆け足で書いてしまったのでなんとも薄かったり中途半端な話ですが、息抜きにはちょうどよかったです!
コトノハ様
さようならの準備
07.11.27
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