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トモダチ(シオライ) [ 90/196 ]
「それでだな、俺は思ったんだ。そろそろお父上に挨拶しなければ、とな」
そこまでの経緯は全く聞いていなかった。何故ならライナは眠っていたからだ。だっていつものように、シオンのぐだぐだした長い話など聞いた所で仕方がないではないか。
ところが余りにおかしな雲行きに、漸く意識が浮上したのだった。
「……オチチウエ?」
「リューラさんに御挨拶を……」
「は? 何それ」
その言葉の不穏さは、前に繋がる言葉など聞かなくてもよくわかる。
「何てったって俺たち結婚するんだからな〜」
「ちょっと待てええぇぇぇぇぇ!!!!??」
ライナの突っ込みも何処吹く風。シオンの笑顔は実にイキイキしていた。
「いや、流石に俺もそこまで一気に話を進めたりはしないぞ? まずは息子さんとお付き合いさせていただいています。つまらない物ですがどうぞ…と菓子折りを渡して」
「いやそのお付き合いってやつをお前とした覚えはないんだけど」
「いや先日お前の耳元で『ライナ、付き合おう』って言ったら頷いた」
「ぜってー嘘だろそれ!?」
「嘘なんて、俺がお前に吐いたことあったか?」
「日常茶飯事です」
「………」
ふと、シオンの顔に影がさす。嫌なことでも思い出させてしまったのだろうか。
申し訳ない気持ちになってそっと上目遣いで彼を見る。しかし次の瞬間には魔王のような表情をしたシオンを目に映すハメになる。
「俺と結婚したら、毎日寝てられるのになあ……残念だね、ライナ。わざわざ仕事山積コースを選ぶなんて」
「いや脅しなんて俺には通用しないから。誰もいない山奥まで逃げればいいだけだし」
もうコイツと話すの嫌だな。そう思いながらもライナはリューラにシオンを紹介する自分を想像してみた。勿論、友人としてだが。
たぶんというか、間違いなく彼はリューラのことを「お父さん」と呼びそうな気がする。それを想像すると何故か苛立ってしまう。
自分はまだ、彼を「お父さん」とか「親父」とか、そんな言葉で呼べないのだ。それがシオンなんかに先を越されるなんて複雑過ぎる。
「でも俺に『お父さん』はいないから、ライナが俺と結婚してくれれば『お父さん』ができるのになー」
「……や、別に他のやつだっているだろ」
「俺はお前がいいんだよ」
複雑だ。
複雑過ぎる。
自分がリューラを父と呼べないくらい、シオンの存在というやつは複雑だ。複雑過ぎて逃げたくなる。
「俺はお前が『トモダチ』なのがいい」
自分が傷つかないためなら他者を傷つけてもいいなんて、そんなことはない筈なのに。
―END―
い、痛いのは何故でしょう(汗)
ええと、リューラさん登場しなくてすみません。ちょうど10巻貸し出してまして…資料がなくて…
本当はリューラさんとシオライ、という形にしたかったのですが10巻が帰って来るまで待ってたらもっと遅れてしまうので泣く泣くこんな形になってしましました。すみません。どちらにしても駄文には変わりありません
そら様リクエストありがとうございました!!
2006.08.07
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