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チョコレートの代用(シオライ)* [ 89/196 ]
ふと考えてみる。
今日はバレンタインデー。好きな相手にチョコレートを送る日。
だから、チョコレートを手に、シオンはライナを探していた。そのライナはすぐに見つかったが、場所が問題と言えた。
そこが王室のベッドなら問題ないのだが、同じ王室であってもそこは床だった。
「床で寝るなよなー」
シオンは溜め息混じりにライナを起こしにかかる。
…が、まったく起きそうにない。ので、せめてベッドに寝かせようと抱き抱えた。
――少し、軽くなった?
ベッドに寝かせると枕元にチョコレートを置く。起きたら食べるだろうかと思いながら、シオンは笑った。その笑い声に気づいたのか、ライナが目を覚ます。
「ん……シオン?」
ぼんやりとした眼が自分を捉える。そのことが変に嬉しくて、口づけた。
少し荒れた唇を、愛しげに舐める。擽ったそうに身をよじるライナ。シオンはゆっくりと歯列を割って口内へ舌を送り込んだ。ライナの舌を己のそれで絡めとると、さすがに我に返ったらしい。ぼんやりと朧気だった瞳がしっかりとシオンを映す。
「おはよう、ライナ」
一瞬、唇を離して告げるとまた触れた。ライナは一瞬驚いたように眼を見開いていた。
「……っ!」
ようやく暴れ始めた。
しかし、シオンは慌てもせずにライナの腕を押さえ付ける。
「なあ、ライナ――チョコレート持ってない?」
「は?…持ってるわけねーだろ」
「じゃ、体でいいや」
シオンはそれ以上口にせずライナの首に口づけた。ちゅっと吸うと赤い痕が残る。
ライナは諦めたように溜め息を吐いて、それからシオンの長い髪をギュッと引っ張った。
「痛っ」
「じゃあやめろ」
「ヤだ」
お前は駄々っ子か、と告げようとした唇を再び塞いで、服の中に手を入れていく。
愛してる、なんて歯の浮くような台詞を吐きながら、たまらない幸福感に酔いしれた。
「…あ、……んっ」
ライナの肢体が跳ねる。
黒い眼が涙で濡れていて、綺麗だと思う。目尻に口づけて涙を吸いながら、シオンは己のものでライナの胎内をかき回した。
押し殺したような声は逆効果で、自分を睨みつける眼さえあおるだけで。
耳元で甘く、そっと囁くとそれだけで感じるのか、まとわりつくようだったそれが、全て絞りつくそうとしているように絡む。シオンは僅かに顔をしかめながらそれに耐えた。
「なあ、ライナ――チョコレートは?」
「……しつこ……ない…っての!」
「何で?」
シオンは不思議そうに首を傾げ、ライナを見る。
「――まあ、それは後で、な」
自分で言い出しておいてそう言ってのけると、シオンはライナを追い上げることに集中した。
「で、チョコレートはないんだな?」
怖いくらいの笑顔で聞くシオンに、ライナは少々怯えながらも頷いた。
「じゃあ――」
シオンは枕元に置いてあった箱からチョコレートを一つ取り出すと、ライナの口元へ運んだ。首を捻るライナの口を開け、口内にチョコレートを押し込む。
――そして、口づけた
「――ん…っ!?」
シオンの舌はライナの口内に入り込み、溶けかけたチョコレートを舌ごと絡めとる。互いの唾液で溶かすようにそっと味わい、溶けきるのを見計らってようやく離れた。
「あと、5個あるからな」
語尾にハートマークを漂わせるような声音で言うシオンに、ライナは気が遠くなったとか。
‐end‐
配布期間 2006.3.5〜4.5
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