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万鴨小話(万鴨) [ 42/196 ]
拾ったバトンを万鴨で答えてみました!
ひたすら万鴨な小話
《物書きさんの為の暇つぶしバトン》
・以下の言葉に続きそうな文章を書いてください。
・短くても長くても。基本なんでもOKです。
・どうしても思いつかないのなら消してくださっても構いません(だって暇つぶしだもの)。
それではどうぞ。
□濡れない雨に
×
□頬に痣1つ
頬に痣1つ。それを目敏く見つけた彼は「誰が」と聞いた。
誰でもいいだろうと答えるが彼は納得しない。しつこく痣をつけた犯人を尋ねてくる。
君には関係ないと答えると彼は顔を歪ませた。
□ひらり、ひらりと
ひらり、ひらりと舞う、蝶のように。
枷もなく飛ぶことが出来たならあの男はどこへ行っただろう。
きっと彼に捕まることもなかっただろう。
□消せない消しゴムは
消せない消しゴムは不要。剣を持つことのできない武士など不要。
ならば今の彼は不要に違いない。だのに、自分は彼に執着した。
(腑に落ちなくてもそれが真実)
□振り返って見たものは
振り返って見たものは男の悲しそうな表情だった。サングラス越しだというのに彼はそう思った。今にも泣きそうな表情だと。
行け、と男が言う。その言葉に従うように彼は走り出した。
あの時振り返って見たものは、おそらく男の罪悪感。少なからず好意を持っていてくれていたのか、情がうつったのか。
どちらでもいい。彼はただ男に操られることしかできないから。
□けっとばしたものは
けっとばしたものは告白。返事。交換日記。それからデート。
乱暴に押さえ込んだ身体は思うように力が入らないからか、小刻みに震えている。
好きだと耳朶を噛みながら囁くとぶるりと身震いされる。それは快楽からか、それとも嫌悪か。おそらく後者だろう。
白い首に歯を立て、ねっとりと舐め上げる。
好きだ。愛している。好きだ。
返事は聞けなかった。否、聞かなかった。
ただ乱暴に、できる限り優しく、犯した。
□はめられない指輪
はめられない指輪を無造作に机の上に置く。
「すまない」
「どうして」
「サイズを、間違えたでござる」
しゅんと落ち込んだ様子を見せる彼。
「君がくれたものならはめられなくても嬉しいよ」
□覚えられない誕生日
覚えられない誕生日は誰のものかといえばそれは覚える気のおきない人間の誕生日に違いない。
とはいえ自分は5月5日はあの男の誕生日だと知っている。覚えたくて覚えた訳ではない。気がついたら覚えていた。
そう言うと目前の男は、妬ける、と唇を尖らせた。そういえば自分はこの男の誕生日を未だに覚えていない。
それならば僕の誕生日は覚えているのかと尋ねれば何時何分何秒かまで正確に口に出した。
「気持ち悪い」
彼が落ち込む様子を楽しげに眺める僕も随分と意地が悪くなったものだ。
(本当はとっくに記憶してる。君の誕生日くらい)
□過去と未来をすり替えた
過去と未来をすり替えた。
過去は過ぎ去った時間。未来はこれから創る時間。
けれど男は己の過去と未来をすり替えた。だから男には創り上げるべく未来がない。男に残るのはただの過去。過ぎ去った時間にただただすがるだけ。
□一目惚れなんて
一目惚れなんて有り得ない。それが自分の考えで、おそらくはこれからも変わらない。
けれどあの男は簡単に自分に一目惚れしたと言ってのけた。男が、男に。
どんなに諭したところで、無視したところで、彼の言い分は変わらない。それを欝陶しいと思う一方で悪くないと思っている自分が…
…いや、そんなことはない。何を書いてるんだ君は。僕の心の中?君の願望の世界の間違いだろう。ついでにその一目惚れとやらも間違いだろうが。
何、それは違う?どうだかな。君のことだからそこらのアイドル全員にだって同じことを言うだろうし。
ヤキモチ?馬鹿らしい。
……時間だ。行くぞ。
□今ありのままに
今ありのままにすべてを打ち明けたとしたら彼はいったいどのような反応をするだろうか。
ただ、わかるのは好意的に受け止めてはくれないことだけ。
(それでもこの想いは変わらないのだろうが)
□青い空の下
青い空の下、彼は猫に餌をやっていた。
普段とは違う柔らかな表情。緩く持ち上がった口角は男なのに色っぽいような気がした。
猫は安心したように彼の膝におさまる。
猫が羨ましい、と思った。
□爆発音を立てながら
爆発音を立てながら、世界が崩壊していく。
背中に彼の吐息を感じたあの瞬間、彼は生きていた。
そのままさらってしまえばよかった。そんな馬鹿なことを考える。馬鹿なことだ。
あの瞬間、自分は本当は今にも心臓が止まりそうな気がしていた。あの瞬間、自分は時が止まればいいのにと思った。
あの瞬間、自分は中学生みたいな恋をした。
爆発音を立てながら、世界は崩壊していった。
□赤い花が散る
赤い花が散る。真っ赤な、赤い、赤い、花が散る。
美しい最期に違いない。彼は思う。それは美しい最期だ。それを自分は止めてはならない。見届けなければならない。あの男の最期を。
彼の用意したそれが、今まさに完成しようとしている。美しい、美しい、あの男に相応しい最期。
赤い花が散る。
「違うだろう」
声がする。
「お前は、あの男が手に入らないから、殺すんだ」
声がする。
「今ならまだ、」
彼は、
彼は、サングラスの向こうで確かに涙を流していた。
□風光る
×
□足跡を踏んで
足跡を踏んで、想う。こうして同じ道を、なるべく同じように歩いてみたところで彼の考えることは何一つわからない。
だから気になるのだろうか。自分の持っていないものを持つ彼が。
自分は彼にとってどういう存在なのか。取るに足らない存在なのか。それとも多少の思い入れはあるのか。
わからない。何一つ。
それでも彼が自分を好いていることを期待してしまう。
(そんなことなどありはしないのに)
□重なりあう影は
重なりあう影は二つだった。それは君と僕。
今、隣を見る。そこには誰もいなかった。
(結局は僕の独りよがり)
かなしい、なんて思うのはきっと愚かなこと。いとしい、なんて想うのはきっと愚かなこと。
すべてを忘れるようにただ己のすべきことを。それだけを考えた。
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