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出会う筈のない男(白夜叉×銀時) [ 41/196 ]
「新八ー神楽ー。何処行った?」
目覚めれば眠る前まで確かにそこにいた筈の二人の姿がない。訝しげに声を出すが返事はなかった。
買い出しにでも行ったのだろうか?
「……俺の生クリームも買ってこいよー」
もう一度眠ろうとソファーに寝転ぶが、どうにも眠れそうにない。仕方なく階段を降りて外をふらつくことにした。
どういう訳か人がいない。
まあ居た所で厄介なだけだから良いことかもしれない。が、これは変だ。
外を歩いていても擦れ違う奴どころか視界に犬の一匹すら入らないのだ。
そういえば定春は何処へ行った? ああ、神楽たちと一緒か。
考えた所で仕方がない。銀時は首を振るともう少し歩くことにした。
――そして、路地裏で赤い色を見つける
「……おい、お前怪我してんのか?」
面倒だとは思ったがようやく見つけた人間だ。思わず声をかけるとその顔が目に入る。
銀色の髪はうねっており、けれどそこにあったのはしっかりと前を見据えた両の目。確かな力を込めたその目にかかる前髪からはだらだらと赤い血が流れて鼻から下を真っ赤にしていた。
服は胸元を真っ赤に染めており、地面に杖を付くかのように付いた刀に添えられた両手もまた真っ赤だった。
刀は赤で濡れ、懐紙で一度二度拭った位ではとても拭き取れそうにない。
嗚呼これは人を斬った後の人間だ。
否、夜叉だ。
「……怪我、してんのか?」
「……………」
返事はない。
「…………」
関わるな、と警報が鳴り響く。
なのに――
「待ってろよ」
急いで万事屋から包帯だの消毒液だのを持って来る。もう居なくなっているのではないかと不安に思っていたのだが男は変わらぬ格好でそこに居た。
安堵すれば良いのかよくわからなかったが、とりあえず銀時は男の手当てを始めるのだった。
「………何だ、返り血ばっかだな」
そんなこと、手当てを始める前から知っていた。
「――なあ、白夜叉」
昔の俺。
「……人を斬るのは、嫌いだ」
漸く口を開いた男から漏れたのはそんな、当たり前な言葉。
「俺も」
「だけど、たまらなく楽しくもなる」
「だから、止めたんだ」
「止められるものか」
「止められるさ」
「止められない」
「止めるんだ」
直に、戦争も終わる。お前は変わらなくちゃいけないんだ。
「そうなったら俺は何処へ消えるんだ?」
「消えたりなんかするもんか。お前が変わって俺になっていくんだ。俺とテメーは一緒だよ」
「――そうか」
男は――白夜叉はひどく儚げに笑って見せた。
その表情を目の当たりにした銀時は不思議と動揺していた。何故、自分のあんな表情を見なければならないのか。
「……お前、そんな表情もできんのな」
「俺はお前と同じだからな」
「あっそ」
段々近づいてくる微笑んだ白夜叉の顔に、自分はこんな表情もできるのかと感心していると…――段々近づいてくる?
漸くこの状況がおかしいことに気づいた銀時は慌てて後退しようとする。が、白夜叉は反対に近づいて来る。
「……ちょっ…顔近いって!?」
「俺とお前は一緒なんだろ?」
「へ?」
その後の言葉は相手の口へ消えた。
「俺はナルシストじゃねーからっ!!!?」
「銀ちゃん何言ってるネ」
「しっ。関わらないほうがいいよ神楽ちゃん」
いつの間にか白夜叉の姿は消え、買い物袋をぶら下げた新八と酢昆布を咥えた神楽が通りの向こう側に居た。
「って俺は?俺は何処行った!?」
「銀さんはここにいるじゃないですか」
「そうネ。銀ちゃん頭ぶつけたカ?」
憐れんだ目で自分を見る二人の子ども。だが、それよりも銀時は白夜叉が何故現れ、何処へ消えて行ったのかが気にかかった。
――夢だったのだろうか
それなら、どうにか自分は過去を吹っ切れたのだろう。そう思うと少し気が楽になった。
「新八ー生クリーム買って来ただろうな」
「そんなの買ってきませんよ。アンタ糖尿病で死にたいんですか?――ってそれどうしたんですか!?」
軽口を叩く銀時の白い着流しを指差す新八。
それ、とは何だろうか。首を傾げて自分の服を見下ろす。そして――絶句した。
真っ赤に染まっていたのだ。血で。
「銀ちゃん怪我したアル!!」
「病院!?病院行かないと!!!」
慌てる二人を他所に、銀時は空を見上げていた。
もう、二度と会いたくないものだと思いながら。
―END―
すみませんこれはちゃんと×表記でいいんでしょうか? +表記じゃなくて? ああでもちゅーしたからギリギリ×でもいいよねうん(勝手に納得)
綾乃さんリクエスト有り難うございました。なのにこんな訳のわからない文ですみません。
初銀受け。初白夜叉攻め。当然初白夜叉×銀時でございます。本当は裏も書こうかなとチラと思ったりなどしておりません。ただ入るとしたら『その後の言葉は相手の口へ消えた。』と「俺はナルシストじゃねーからっ!!!?」の間に違いありません。だから銀さんも血まみれだった訳です。密着して血が多量に付着してしまった訳です。
2006.08.08
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