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別れの唄(銀八マダ) [ 39/196 ]



「もう、やめにしませんか?」



乱れた制服を正しながら長谷川が呟く。
放課後の屋上。周囲には誰もいなくて、ただ遥か下にある校庭の方からは部活働による生徒たちの声が聞こえてくる。

さきほどの行為のせいか、長谷川の目元は僅かに濡れていた。しかしすぐにサングラスで隠してしまい、彼の表情は読めなくなった。

銀八は煙草をくわえ、ライターを探しながら受け流す。長谷川はもう一度言おうとはせず、黙って自分も煙草をくわえるとライターで火をつけた。



「何を」



知っていて、聞いた。
これで最後になるのだと。



長谷川が煙草を口から外そうとする前に、火のついていない自分の煙草をくわえたまま彼の煙草に付着させる。長谷川は驚いたように目を見開いたが黙って引火するのを待っていた。
貰い火で火のついた煙草を軽く吸い込むと、ニコチンを欲していた体にほどよく染み込んだ。



「――好きだったんだけど」



タイミング良く吹いた強風で、ボソリと呟いた銀八の声などかき消されてしまいそうになる。

長谷川には聞こえただろうか?



銀八は黙って屋上を後にした。



体育館からは卒業式の歌練習が聞こえてきていた。



別れの唄。
この関係に終りを告げるように



「長谷川」


嘘でも口先だけの薄い言葉でもなく

愛して、いたなんて




どうしたら信じてくれただろうか。



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