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恋のABC(銀全)* [ 37/196 ]

「服部」


坂田銀時が服部全蔵と付き合い始めてから1週間。未だ名前は呼ばせてもらえず、キスどころか手を繋ぐことすら許してもらえない。
そんな彼に不満を抱くどころか、「好き」という気持ちが更に高まっていくこと止められない銀時だった。

けれど、そこにあるのはいつも不安だけ。


「だーいすき」
「ウザい」
「えー銀さん泣いちゃう!」


だって、彼が自分と付き合っているのは、彼が自分との「勝負」に負けたから。そうでなければ付き合う筈もない。
そのくらい、いつだって迷惑そうな顔をしているのだ。


もうやめようか。理性が何度告げただろう。それなのに銀時は止められずにいた。


本気だったから、諦めたくなかったから。
卑怯者でも何でもいいから、ただ隣にいられればそれで良かった筈なのに――


「いいかげん、厭きただろ?」
「は……?」


服部は露骨に顔を顰めながら呟く。


「『恋人ごっこ』はもう終わりだ。俺は仕事があるから帰――」


気がつけば服部の腕を掴んでいた。ぐいと乱暴に引き寄せてから床に押し倒す。

逃げ場をなくしたのは服部だけでなく、銀時もそうだった。
「恋人ごっこ」が終わっても「友達」に戻ることは出来なくなる。それでも、理性はちっとも役に立たない。

ただ無様に泣き続けて縋れば、一緒にいられるのだろうか?




「じゃあ、厭きさせろよ」


厭きるわけがないのに。














「服部…」


名前を呼びながらも銀時の指は彼のものへ絡む。先端を弄ると白い液がぽたりと落ちて床を汚した。それにも構わず行為を続ける銀時を見る服部の眼は蔑むでもなく、どうでもいい、空気に向けられたような眼だった。
その眼を見ていることさえ辛くてできなくて。片手で目隠しをするように覆いながら別のことを考える。なんだ、嫌だって言っても感じてるじゃないか。濡れてるじゃないか。

白濁を指に絡め、後孔へ塗り付けるようにする。入口は銀時を拒むように固く閉ざされており、それは余計に銀時を苛立たせた。
何故自分を拒むのか。どうして好きになってもらえないのか。自分はこんなにも彼のことを好きだというのに…


その一方で銀時は興奮していた。好きな男の痴態。悔しそうな表情。それを眼に映す度に自身が熱く鼓動するのがわかった。
服のせいで日焼けしていない個所を強く吸う。汗ばんだ匂いがくらりと脳髄を刺激した。赤く残った痕を撫でると支配欲が満たされていくのがわかる。
菊座を解すのは忘れてそれに夢中になっていった。胸の飾りのすぐ横。耳の後ろ。ついでに耳朶を噛みながら息を吹きかけると服部の体がびくりと揺れた。それに気を良くしてもう2度3度とそれを繰り返す。たっぷりと時間をかけたそれに再び服部のものが熱を持っていくのがわかる。

唾液で濡れ光る2つの突起に満足気に舌なめずりし、ゆっくりと下肢にも所有の印を残していく。
当然といえばそれまでだが、下着を脱がせば白い日に焼けていない肌が待っている。どちらかといえば上半身よりも白くそれにまた軽い興奮を覚える。下着で隠れるか隠れないかの際どい所に吸い付きながらまた後孔へ指を伸ばす。先ほど塗り付けた精液が乾いてカピカピになっていたから今度は自分の唾液で指を濡らしてからにする。


「……くっ」


漸く漏れた声。だがそれは快楽ではなく苦痛によるものらしい。
それを与えているのは紛れもない銀時であり、他の誰でもない。それが少しだけ銀時を楽にした。


「………全蔵」



名前で呼ぶと怒るから。だけど、最後くらい何度だって呼ばせて欲しい。振り絞るような声と反対に指は乱暴に彼を暴いていく。最初は狭かった其処がゆっくりと指に合わせて蠢くようになっていく。まだまだ慣れきっていないと感じながらも我慢は出来なかった。

「……ちょっ…やめっ…――っ!!」


全蔵が静止の声を上げるのも聞かず、一気に貫いた。

愛しているという言葉は、決して言い訳にならないと知りながら。




















「ね、俺と勝負しねー?」


我ながら浅はかだとしか言い様のない。けれど、本気だから馬鹿にでも何にでもなれたのだ。


「は?」
「勝ったら俺と付き合え」


付き合うって、何処に?
そんな使い古されたボケは返ってこなかった。それに安堵すべきか、逃げ場のなくなったことに焦るべきか。



「俺、お前が好きなの」



好きだから、振り向いて欲しいんだ。





その時、どうして服部が勝負する気になったのか。そんなことは考えなくてもいいと思った。
ただ、自分が彼に勝てば、彼と付き合うことができるのだと。そんな喜びで、それ以外は何も見えちゃいなかった。


勝負は僅かな時間で決まる。

銀時の構えた木刀がの喉元ギリギリで止まり、服部がひどく驚いたような目で銀時を見る。
その眼が、いつもの気だるげな眼でないことくらい自分でもわかっていた。



「………」


ごめんと謝る気はなかった。謝ることは自分の気持ちを嘘だと言ってしまうようで、嫌だったのだ。
それでもすまないと思う気持ちは十分にあった。服部の下肢から流れる白濁と、交じり合うようにして流れる赤い色。出血してしまったのだと理解すると同時に後悔する。

それでも仕方のないことなのだと言い訳する。そう呟いたところで許されることはないのだろうが。



「……俺さ、やっぱ厭きないわ」


眠っているのか、それとも顔すら見たくなくて狸寝入りをしているのか。服部からの返事はない。


「じゃ、『さよなら』」


そう呟いて、出て行こうとする銀時を止める声。


「………おい」


掠れてしまってはいるがそれは間違いなく服部のもので。銀時は何を言われるのかと構えながらも振り返った。
ここでハッキリ大嫌いだと、憎んでいると言って貰えた方が楽だと。諦められると思いながら。



けれど、その考えは打ち消されてしまう。

他でもない服部の言葉で。



「お前、本当に俺のこと好きなの?」
「……最初から言ってんだろ」
「そっか……」



少し考えるような仕草をして、呟く。


「いや…その……いつもの冗談かと思ってだな………ホント、悪い」
「………何で謝るの」
「や、だって俺お前傷付けたろ?」


それは、自分の方なのに。


「……それにだな…………嫌いじゃない…つーか、その反対だから」


「…は?」



意味がわからず聞き返すが、服部の顔を見て理解する。

……いや、そんな都合のいい展開あるわけがない。


「その…本当に厭きないってんなら、いい」
「何が」
「俺に言わせんな」
「それって……『ごっこ』じゃなくて?」
「決まってんだろ」




顔を赤くした服部をしっかりと抱きしめて、今度はちゃんと謝る。もういいと言った彼にはその代わり今度はちゃんと手順を踏んだお付き合いをすることを要求された。



そんな、ご都合主義な話。昔から有り得ないとは思っていたのだけれど自分に降りかかるのなら喜んで受け入れよう。そう銀時は微笑んだ。






―END―




佑佐様リクありがとうございました!!
今ひとつ答えられていなくすみません……どうもえろに持久力がないというか…もっと長く深く書きたいとは常々思っているのですがこの辺りが限界です。
マニアックなプレイにならなくて良かった…!!(ホッ)

全蔵の言った手順とはABCのことなんですが、彼のABC、実は『交換日記告白手を繋ぐ』です。銀さんの幸せは果たしてどれ程続くのでしょう(笑顔)




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