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宣戦布告(3Z設定桂全) [ 35/196 ]
見つけたのは本当に偶然で
放課後。生徒たちが校舎から消えた頃。
全蔵は教室に忘れ物をしたことに気がついた。と、いっても彼は教師であるから生徒の机の上にはない。そして翌日の授業のためにもそれがないとどうしても困る。
たしか、6時間目は3Zだった筈だ。
銀八のことだから、教室の鍵は絶対に閉めない。何故なら彼は移動教室でガランドウになった教室にさえ鍵をかけろと言わないのだ。その代わり貴重品は個人の責任だとか。
教室の鍵は開いているだろう。それなら、今のうちに取りに行こう。
そして全蔵は職員室を後にした。
――ガラッ
案の定抵抗もなくドアが開く。このクラスに盗難事件はないのだろうか。
ああ、でも何かあったような気がする。が、それは忘れておく。
黒板を見ればそこには日本地図が貼ってある。それほど大きな物ではないとはいえ誰か一人くらい気づいただろうに。それなのにどうして持ってこないのかと文句を言いながらマグネットを外す。
だいたい自分もどうして忘れたのだろう。
マグネットを回収し、地図を丸める。が、その作業中にはたと気づく。
地図の貼ってあった場所に、白いチョークで何か書いてある。
「……『好きです』…?」
自分が貼った時にはそんなこと書いてはいなかった。それなのに今書いてあるということは放課後に誰かが書いたのだろう。しかし誰が?
ぽかんと口を開いたままその字を見る。
しかし何時までもそうしていた所でし仕方がない。全蔵は地図を丸めるとそのまま黒板に背を向けた。
――しかし、消しておいた方がよくないか?
先ほど全蔵が書いた字で埋め尽くされている黒板。その角に、とはいえ明らかに大きさと癖の違う字があるのは目立つだろう。どんなつもりで書いたか知らないが、書いた者が恥をかくのは必至だろう。
何せあの担任と、このクラスだ。
仕方なく振り返ると黒板消しを手にする。数度其処を撫でれば何もなかったように緑色をした黒板。
この字の持主はいったい何がしたかったのだろうと思いながら、全蔵は職員室へ戻った。
――翌日
また3Zが6時間目だった。
そして、全蔵はまた地図を忘れた。
放課後欠伸をしながら教室に向かう。それとなく周囲に注意を向けながら廊下を歩くが、怪しい人影はない。
抵抗なく開いたドア。一歩、踏み出すと黒板に貼ったままの地図が目に入る。
マグネットを外し、そっと地図を黒板から離す。そこには矢張りチョークで書かれた文字があった。
『服部先生、好きです』
今度は名指しである。
でも、誰が?
自分に好意を寄せていそうな女子生徒などこのクラスにいただろうか。
どちらかというと女子生徒には苛められていたような気がするのだが。それともあれか。『好きな人ほど苛めちゃう』のか。
いやまて、悪戯という考え方もある。きっと自分が頬を染めたら最後、散々な目に遭わせられるのだ。
どちらにしても恐ろしいやつらだと顔を青褪めさせた全蔵は慌てて教室を後にした。
その晩、全蔵は小テストの採点をしていた。
そしてそれとなく黒板の筆跡を探す。
とはいえ黒板に書く字と紙に書く字はかなり変わる。そんなことでわかる筈がない。
「ん?」
一枚だけ、裏に長々と字が書いてあるテストを見つける。表の名前を見ると『桂小太郎』となっていた。
何のクレームだろうかと半ばため息を吐きながら裏に反す。しかし、其処に書かれていたことに呆然とする。
『先生が好きです』
黒板の字とどこか似ているその字が、そう書き記す。始まりはその一言から始まり、段々と白熱した討論でもしているのかと思うほど乱雑になっていく。
先生に振り向いてもらうためならジャンプの漫画家になるとか、痔が治るように医者になるだとか、先生は危なっかしいから自分が教師になって守るだとか。
お前は幾つの職に就く気だと呆れながらも読み進めていく。
やる気のない所も、痔も、髭も、男だということも、全部含めて好きだと。書かれていることは始終それに尽きた。
なんだこいつは、と思いながらも口元が緩んだ。
一週間後、また6時間目が3Zだった。今度はわざと地図を残して教室を後にする。
放課後にその地図を回収に来るとまた『好きです』の字。
全蔵は喉奥で笑いながら、チョークを手にした。
『落とせるもんなら落としてみな』
一先ず、宣戦布告。
―END―
***オマケ***
ヅラがストーカーまがいな行為に至った訳
「近藤、恋い慕うほどの人間ができた場合、どういった方法で想いを伝えるのか知っているか?」
「恋い慕う?ああ、お妙さんか!?お妙さんは渡さないからな!!!」
「いや、服部先生だ」
「男じゃん!?何、愛は性別を超えるって!!?わかったまかせろぉぉぉぉ!!!!
まずは心のこもった手紙だ!そしていつも見ているとアピールしろ!それから…」
「土方さん、ストーカーがストーカー増やしてますぜィ」
「ほっとけ」
相談する相手を間違えた桂君でしたとさ。
―END―
綾乃様へ…すみませんっ
ラブラブなのとか裏なのとか色々考えたのに何故かこんなことに…
ど、どうしましょう;(聞くな)
やっぱり要りませんかね?リ、リベンジ受け付けますが(おい)
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