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3.すれちがい [ 175/196 ]



「待ってよカッちゃん!」


廊下の向こう側から喧しい音を立てて駆けて来る少年。誰だアイツ、と思いながら美鶴は顔を顰めた。
何ていうか、ああいう五月蝿いやつには関わりたくない。

けれども名前は自然と思い浮かんだ。ミタニワタル。


馬鹿がつくほど真っ直ぐに、明るい少年。


どうしてだろう。眼が、彼を追うのは。五月蝿いから?
違う、その存在を自分は意識しているのだ。



「三谷亘」



そっとその名を、擦れ違う瞬間に呟いてみる。亘は一瞬瞬いて此方を見たが、すぐに気のせいだと判断してまた駆けていった。



「三谷、亘か」



誰もいなくなった廊下で、美鶴はそっと呟いた。














自分の隣で顔を顰めながらジュースを飲む亘を見て、美鶴はようやく現実に引き戻される。


(あの時は、まさかこうなるとは思ってもみなかったな……)


今、隣に三谷亘が居る。
それも、ビルで自分を助けてくれた。



(助けられるよりは、)



守りたい。
助けたい。
良い所を見せたい。


そう思っていた相手に、これはないだろう。





だから、





幻界へ、







来い









少しくらい、俺にも良いカッコさせろ。
















―END―


2006.07.29


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