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後悔する日がくるなんて(銀全前提高全)* [ 46/196 ]

いつかどちらかが言い出すと知っていた。自分が相手を好きなのと同様に相手も自分を好きだというのは自惚れでもなんでもない事実だった。想いを口にしないのはプライドを守るためとでも言おうか。互いに相手が焦れて口にするのを待っていた。

そんな関係がどれくらい続いただろうか。


「…くっ」

小さく息を吐くと同時に中に放たれる。その感覚にまた自身が震えた。ひどく虚ろな表情をしていたらしく、銀髪の男が「まだ足りないのか」と笑う。

「足りないのはお前だろ」

呆れたように返せば「まあね」と、わずかに肩を震わせるようにして笑われた。挿入したままであったから内部が震え、その刺激に嫌な声が漏れた。
足りない、とは思った。幾度も交わりながらも愛の言葉を交わしたことは一度も無い。快楽を貪るだけの行為には虚しさが残る。

「足りない」

銀髪がそう呟きながら、肩に顔を寄せた。少しかさついた、柔らかな唇が素肌に触れる感覚にくすぐったさを感じた次の瞬間には軽く歯を立てられた。歯を伝ってわずかな唾液が付着する。ぬるりとした感覚。気色の悪さに肩を震わせた。
お前は吸血鬼かと文句を言おうとした口をふさがれる。

「ん……」

我が物顔で入り込む相手の舌を抵抗の意味を込めて軽く噛む。
それを挑発と受けとったのかヤツは興奮したらしくそこをまた固くしはじめた。

「……てめっ」

唇が離れた瞬間に非難しようと睨みつけた。けれど、ヤツの表情を見て何も言えなくなってしまう。
欲情、しているのだ。自分にこの男は欲情しているのだ。
そう思うと何かが満たされていくような気がした。

「あと1回だけだからさー全蔵ちゃん」
「……後で1発殴らせろよ」
「おう」

軽い調子で頷く銀髪を見ながら、そうは言ってもこいつのことだから避けるんだろうなあと考えた。





   ***



「…………1回じゃ済まないし殴っても避けるってわかってたけどさ」

体中が、痛い。
結局あの後「抜かなきゃノーカウントだよな」とかアホなことを言い出した野郎により抜かずの2発。その後は後始末と称してねっちりとなぶられたわけで。
足腰立たなくなったし、どっと疲れた。
治ったばかりの痔が再発しそうだと恨み言を言えば「俺が毎日薬塗ってやるよ」なんて言いやがる。まず間違いなく悪化するので痔が再発したらアイツとは会わずにいようと誓ったのは言うまでもない。

多少は回復した体を引きずるようにして歩いているとパトカーのサイレンが聞こえてきた。近くで何か事件でもあったのだろうか。
まあそれはそれとして、早く帰って横になろう。アイツのところにいたんじゃあゆっくり休んでいられるはずもない。
そんなことを考えながらふらふらと歩いていると、強く腕を引かれた。


「へ…?」


建物と建物の間。日の当たらない、人通りもなければ道からは視覚になる位置。
そこに、引きずられるように押し込まれた。

「…いて……――っ!?」


壁に背中を強く叩き付けられ、痛みに悲鳴を上げようとすると口を柔らかい何かで塞がれた。キスされているのだ。
こんな非常識なことをする輩は1人しか思い浮かばなかった。だから、その無駄にふわふわした髪を引っ張ってやろうと相手の後頭部に手を回した。
そして、その感触に驚く。


(サラサラ…?)


全蔵が予想していた、天然パーマによるふわふわした触り心地とは掛け離れていた。
……それに、甘くない。
目を見開くと、相手の目が、ニヤリと笑った気がした。
そして唇が離れた。
咄嗟に飛びのいて、距離をおく。まず目に入ったのは黒髪と、色鮮やかな着物だった。

「…………てめぇ」


高杉晋助。過激派グループ『鬼兵隊』のリーダーである人物だと記憶していた。サイレンはコイツが原因か、と冷静な部分が納得する。

「暇潰しに付き合え」
「……は?」

お前は暇潰しで男にキスするのか。


「じょうだ――んっ」


再び唇が重なる。今度はすぐにその苦さが咥内に広がる。肺が真っ黒になったら嫌だなあと思う。きっと痔にも優しくない気がする。

「銀時の匂いがする」
「……何、アンタ坂田銀時が好きとか?」
「まさか。ただ、銀時のモノなら壊してやりたいと思うだけだ」

それはつまり銀時への執着で、イコール銀時が好きってことじゃないですかね?
だからそういうのは本人に言うべきではないだろうか。俺関係ないし。
「だが、その目が気に入った。俺と来い」
「は?」
なんだよこの人の思考回路わかんない。
逃げていいよな。むしろ逃げないと危険だ。
高杉の身体を押し返す。
大丈夫。逃げられる。身体とか痛いけど頑張れば逃げられる。
「俺と来い」
ひゅ、と風を斬る音がした。
朱が、地面を濡らす。
斬られた。

痛みに失いそうになる意識を必死でつなぎ止め、目の前の男を睨む。男はどこか楽しそうに、痛みに喘ぐ全蔵を見ていた。

……この男は危険だ。

(好きとか、言っておけばよかったかね)


ガラじゃないけど。言っておけば良かったかもしれない。


そして、世界が途切れた。




   ***



「アンタが猫を飼うなんてらしくないねェ」
「そうか?」
「どこの野良猫を連れてきたんだィ?」
「……いや、飼い猫をさらってきた」
「…………」
「そろそろ飼い主が迎えにくるかもな。ただで返す気はないが」



‐END‐

あれ……BAD ENDだ…
いえいえ、書いてないだけでちゃんと銀さんは迎えに来てくれると思います(書け)




すごく遅くなりましたが、
46464hit 佑佐様へ(銀全前提高全)!


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