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はじまり [ 47/196 ]


「ん…痛っ」

「ああ、切れたか。」



男は無表情のまま深く突き入れた。そこから血が流れるのがわかる。
それでも耐えるしかないのだろうか。全蔵は卒倒しそうになりながらも懸命に耐えた。

結合部から流れる赤い血が、畳を汚す。



「………っ、……ぁ」

「どうした?声を上げろ」



それが命令とあらば、聞かなければならないのだろうが、それでも全蔵は口を噤んだ。それが彼なりの抵抗でもあった。
ヒュッ、と喉が鳴る。焼け付くような痛みとねちゃりとした何かに凌辱されながら、霞みそうな意識をどうにか保つ。

男は声を漏らさぬ全蔵に不満げに腰を打ち付ける。


そこにあるのは痛みだけ。快楽を貪る男に全蔵は冷たい目を向けた。それが気に入らない、と渇いた音を立てて叩かれる。
頬がジンと赤くなるのを感じながら、ただ終わりが来るのを待った。

やがてそこに赤だけでない白が混じった。













昔から、何故かこういうことをさせられる。
抵抗してもしなくても変わらず、慣らしもせずに犯される。そこには痛みしかなく、最初は泣き叫んで抵抗していた時もあったが、そうすると余計痛みがひどくなった。

だから、これでも随分と善処している。勿論そこに快楽など全く存在せず、痛みだけの行為には吐き気がする。
男に体を開くなど、好きでしていることではない。


金のため、か。それともただなんとなく、ズルズルと求められるままに体を開くのか。自分でもよくわからなかった。



おそらく、昔から、だからだ。それが彼にとっていつしか『当たり前』になっていたのだ。


今日も今日とて雇い主に犯されて、ふらつく足取りで歩き出す。懐に収めた金は自分の汚らわしさを表しているようで、ひどく重く感じた。ただの紙切れ数枚のくせに。



また切れたな、と其処に感じる痛みに思う。


どこへ向かっているのか自分でもわからない。ただ、町を歩いていた。





「おい、どうした」





堪え切れずに地面に座り込むと、男の声が聞こえてきた。どこかで聞いたことのある声だ。
しかしその顔を確かめることもできずに全蔵は意識を手放したのだった





目を開けると視界に入ったのは矢張り目だった。それも大きな目で、それから大きな唇――というか嘴だろうかコレは。呆気に取られた全蔵に、声が降って来る。


「ようやく起きたか」



どこかで聞いた声だった、とまた思う。視界をその大きな物体から逸らして、横を向く。長い黒髪の男が其処に座り込んでいた。
慌てて体を起こしかけて、痛みが走る。ああ、そういえばまた犯されたんだったかと思い出しながら今度はゆっくりと起こす。

しかし、何故こんなところにいるのだろうか。

不思議そうに首を傾げると、男――桂小太郎がゆっくりと口を開いた。



「しかしよく眠っていたな。もう10時間は経過したぞ」



たしかに時計を見れば正午近くだった。
しかし、それよりも何故この男の所に自分がいるのかというのが問題だ。そう問いただせば「倒れていたからだ」とやけにあっさりした答えが返ってきた。

かと思えば全蔵の元から着ぐるみとしか思えない巨大生物を呼び寄せて言葉を交える。ただし、その着ぐるみは大きなボードを出して会話を成立させていたが。



「アンタら、何で俺を連れて来たんだ?アンタらには関係ないだろ」



引きつるような痛みを押し込めて立ち上がり、桂の元へ出向く。桂はよくわからない表情で、ああと答えながら着ぐるみを別の部屋へ行かせた。

全く行動の読めない桂に身構えるが、次の瞬間には再び布団へ転がされる。
何のつもりだと口にするより早く桂の頭部が全蔵の下肢へ向かう。下肢はすぐに剥き出しにされて冷気が肌を粟立たせた。



「やめっ!!」



また犯されるのかと、久しぶりの優しさに触れたのだと思いかけていた胸が痛む。しかし桂はそれ以上全蔵には触れようとせず、やや苛立った声で言った。




「男と付き合っているのか?」

「……は?」



思いもかけない言葉にポカンと口を開けば桂がまた苛立ったように続ける。



「そんな酷い目に遭って、それでも付き合っているのか?」



酷い目?

気がつけば下肢からは血と白濁の混じったものが流れている。それに、そういえば顔も叩かれた。


傍からみればドメスティックバイオレンス。それも被害を受けるのは野郎で、相手も野郎か。


軽蔑でもされるのかと渇いた笑いを喉元から溢す。しかし桂は泣きそうな顔で、信じられない言葉を口にした。





「好きだ」




……好きだ?


そんな言葉、どれくらいぶりに聞いただろう




「俺なら、そんな暴力は振るわない」





この男は勘違いしている。全蔵には恋人など存在しない。そしてこの行為には一切の愛がない。また、全蔵が望んだわけでもない。
ただ拒むことにも疲れただけだ。

それならば拒むことに疲れた自分はその告白を受け入れてもいい筈だ。しかし、全蔵の腕は桂の体を押しのけた。


怖かった。

言葉が、怖かった。






そのまま衣服をろくに整えもせずにそこを飛び出した。

後を追いかけてくる気配が漸く消え、ホッと安堵した。




(何なんだ…)




そもそも理由がない。
好きだと言われる理由がどこにもない。

全蔵たちがエリザベスを人質にしたことを未だ恨んで、その復讐でも考えたのか?

それ以外で桂との接触など考えられず、結局そう思うことにした。



好かれる理由など、どこにもないのだから。





―END―



何が言いたかったかって言うと『全蔵の痔がイボ痔じゃなくて切れ痔だったら萌えない?』ということ(殴)
初めに出てくる男はまあ雇い主。全蔵はヤられた後に辞めてます。

ヅラとの接触は殆どない、ということにしましたのでヅラ視点も書いて理由づけしたいと思います。


てか初全蔵受けがこれってどうよ・・そして需要はなさそう…


いいんです、自分一人で楽しむから(おい)


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