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偽りの笑顔(銀土) [ 31/196 ]


※「人間失格」の銀時視点




昔から作り笑いばかりしていた。自分以外の誰かは自分といる時は「友達」という顔をして、けれど自分がいない時はこちらを嘲笑っているのだろう、と。
そんな可愛げのない人間だったけれど他人から愛されることには貪欲で……いや、むしろ嫌われることを頑なに恐れていた。
作り笑いは、好かれるためにしていた筈だった。
すべての人間から好かれる人間なんて存在しない。誰かに嫌われないと、それは異常な存在だ。けれど俺は誰にも嫌われたくなかった。疎まれることを恐れた。憎しみの対象になることを恐れた。

だから、俺は昔から道化師であろうとしていた。
そうすれば、それほど嫌われることはないんじゃないかって。
そうすれば、多くの人間に好かれるんじゃないかって。


だけど、本当の自分を理解してくれる人間なんて何処にもいないのだと。



「あー、0点とかマジで取れるんだねー」

名前をわざと書き忘れた答案。それで本当に0点になるとは思わなかった。
一応、名前があったら50点ちょっとくらい。悪すぎず、良すぎず。お調子者を演じながら気をつける。
クラスメイトは自分を小ばかにしたように笑う。それでも、いい。自分より下と見下した相手であれば油断してくれる。そう思うから。

俺は馬鹿でいい。だって、誰もがわかることがわからない。お前たちが何を考えているのかわからない。わからないから、怯える。
ああ、俺は弱者だ。


ふと、誰かがじっとこちらを見ていることに気づく。黒髪で、鋭い目付きをしたクラスメイト。
土方十四郎、だ。

(なに、)

何で俺を見る?
何で俺を見透かそうとする?

真っ直ぐな二つの目が俺のすべてを知っているようで、怖くなる。
この道化を見て笑っているのだろうか?

じっと見ていると、土方の口が動く。


(わ)

音には成らない。

(ざ)

けれど、俺に伝えようとしていることはわかった。

(と)



『わざと』

そう、土方の唇は動いた。


「――っ!」


バレた。バレた。バレタ。
俺がわざと名前を書き忘れたこと?それとも笑顔が作りものだということ?


……だとしたら、どうしたらいいのだろう。
クラスメイトから嫌われるのか。いじめられるのか。それとも何も変わらないのか。

「土方ー、一緒に帰らねー?」

近づかない方がいいのかもしれない。それでも近づかなければならないと思った。



偽りの笑顔
(それを見破ったのは、彼)


―END―

銀時視点でした!
相変わらず人間失格を元にしているつもりなのですがすごく微妙です。

学生時代に「ワザワザ」言ってた子と主人公の組み合わせが好きなのです。


でもこうして書くとただの痛い子……ですね。申し訳ない。自己満足です



2010.02.10




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