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人間失格(銀土) [ 30/196 ]


※学パロ?




世界中の誰からも必要されていない気がした。
大切な誰かから必要とされるならそれでいい。けれど、本当に誰からも必要とされていない気がした。



きっかけは、些細といえば些細。とにかく非は完全に自分に在った。
誕生日を、忘れた。
付き合っている彼女の。


『土方君がそういう人だったとは思わなかった!』


怒っている顔も可愛いねとかそんな冗談じみた言葉を吐く状況ではないということくらい馬鹿でもわかる。彼女は本気で怒って、それから泣きそうな表情で「もういい」と言って去っていった。
好きだと思って付き合っていたつもりなのに、足はぴたりと止まったまま。彼女を追い掛けるべき。なのに。動かない。
弁解しても仕方がない。言い訳とはするべき行為ではない。そのうち許してくれるだろう。自信への言い訳はいくらでも思い浮かんだ。

彼女はどうして怒ったのだろう。当たり前だ。彼氏が誕生日を忘れて予定を入れてしまったのだから。
当たり前だ。だけど、どうして?



――自分には、人間の生活というものが、見当つかないのです。



ふと、小説の一文が思い浮かぶ。

そうだ、自分は、わからない。理解できない。謝るべきだと思うくせに本当の自分には一切そんな思いは存在しない。
好意というものもよくわからず、曖昧に受け止めたまま。
嫌悪されることに怯え、他者の視線ばかり気にしている。



(おどけた道化師を演じることはなかったけれど)


どういう時に笑えばいいのか。どういう風に笑えばいいのか。
どういう時に謝って、どういう時に怒って、
人間が自然に行う一挙一動が、わからない。
(どうしたらそれを『自然に』行えるのか)

自分を表す言葉を、その小説のタイトルだと理解する。





「いっけね、弁当忘れた〜」

一人の男子生徒の言葉でクラスメイトたちが笑う。呆れた表情を作りながら男子生徒を見る。銀髪の、天然パーマ。坂田というクラスメイトだった。
周囲の人間は笑っている。土方は、そっと、坂田の表情を見た。坂田は笑っていたけれど、笑っていなかった。

周囲の反応に満足しているようで、それが『わざと』であるとバレていないか不安に思っている。むしろその不安の方が大きいようだった。


「…………アイツも、か」


自分にだけ読み取れたあの表情の意味は、坂田が土方と同じ種類の人間だということだ。坂田は道化師、土方はそうでないという違いはあるが。しかしそうはいってもどちらもピエロのようなものだろう。


(坂田銀時、か)


誰にも必要とされない(実の親さえ信じられないのだから)

誰にも好かれていない(嫌悪されないように必死だけれど)


人間がわからない

(わかりたくても、なにも)



あの物語の主人公は同じ思いを抱えている人間に出会うこともできず、自分だけが異常だと思いながら死んでいった。
けれど、自分は違う。異常なのは自分だけではない。おそらくはあの坂田も。ならばそれはきっと異常じゃない。





人間失格
(そして道化師たちは出会う)





‐END‐


太宰治さんの人間失格がテーマ。
鬱な気持ちを詰め込んだらこうなりました。ややヤンデレ?

もうちょっと続けたい気もする。
少なくとも銀さんとの会話とか……書きたいです。



09.12.09

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