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ただいま(オーフェン・キーオー) [ 144/196 ]
「懐かしいというか、そうでないというか……」
オーフェンは変わらぬ町並みを見て呟いた。
最後に見たのは何時のことだっただろうか。もうずいぶんと昔のことのように思える。
「何だ、オーフェン」
聞き覚えのある声に振り返るとバグアップがいた。
「ウチの馬鹿息子が世話になったな」
「本当に世話が焼けた。まあ俺も世話になったが、そんなんじゃ足りないくらい世話が焼けたな」
実際あいつのせいでここに戻らなくてはならなくなったのだし、少しくらいの嫌みは言いたくなって当然だ。
「キースなら、ウチで飲んでるぞ」
「は? 俺そんなこと聞いてねえし、あいつがなんだって真っ昼間から酒に走るんだよ?」
「お前のせいだよ」
バグアップはそう言って去っていった。
「まだいるはずだ。本人に聞くんだな」
店内は相変わらず人がいなかった。
元々それはオーフェンのせいだったのだが、今は別の意味でこないのか。それともやはりオーフェンのせいなのか。
「キース、いるのか?」
テーブルに突っ伏している一人の男が目に入る。
「まさかお前が昼間から酒飲んでるとはな」
オーフェンは苦笑した。
「黒魔術士殿?……ああ、また、夢ですか。目覚めれば消えてしまう」
「俺は消えないよ」
(アザリー……)
今は彼女の傍にいることさえ出来ないのだけれど。
会いたいと思う気持ちは変わりなく彼の心の中にあって、彼女を救いたかったという後悔が胸の中を渦巻いているのだけれど。
どうして
こんなにもここにいたいと思ってしまったのか。
「ただいま」
あなたに会いたくて、いつの間にかここにいた。
「好きだ」
「私もですよ。黒魔術士殿」
「……起きてたのかよ」
「もう放しませんから。覚悟してくださいね」
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