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ペット(ブーちゃん+シルライ) [ 64/196 ]
よく晴れた日のことだった。
ポカポカとあたたかな陽射しにつつまれ、ちょうど昼食後でもある。重くなる瞼を必死に開けようなどという無駄な努力は最早する気も起きない。無論、もとよりそんな気などないのだが。
ゆっくりと体を横にして、硬い床に寝転ぶ。辺りを見回して枕になりそうなものを探す。
と、見慣れた物が目に入った。
「…ブーちゃん」
ほとんど閉じかけた目をゆっくりと開く。軽く首を左右に振ってシルがいないか確かめる。
誰もいない。
ライナはふわりと微笑み、そっとブーちゃんを抱き寄せた。どうやらブーちゃんもお昼寝中らしく、反応はない。
「おやすみなさーい」
ライナは語尾にハートマークがつきそうなくらい機嫌よく眠りについた。
※※※
「ライナさん、ブーちゃん知りませんか?」
それから約一時間後。それまでブーちゃんによく似たブタのぬいぐるみを手にしていたシルがやってきた。不埒な輩を撃退しようとしたのにブーちゃんが「槍」として機能しなくなってしまったのだ。
これには、慌てた。
しかしよく見ればブーちゃんでなくただのブタのぬいぐるみだったのである。
ようやく思い当たったのがライナの居る宿だったのだ。
「あれ、寝てますね…?」
よくこうも毎日寝ていられるものだ。そう思いながら辺りを見回す。特に物が多い訳でもない室内には、ざっと見回した所ブーちゃんは見当たらない。
こうなったら起こして聞こうか。そう思ってライナに近づく。
と…
「ブーちゃん!?」
無惨だった。
シルが槍と言い張るブーちゃんは、しっかりとライナの枕にされていたのだ。
そしてブーちゃんは息も絶え絶えにシルに助けを求めている。
助けなくては。そう思ってライナの肩に手を置く。
しかし、揺り動かそうとしてシルの動きが止まる。
「駄目だ」
起こせない。もっと寝顔を見ていたい。
むしろ隣で寝たい。よし、寝よう。
シルは一人で頷くとライナの頭をブーちゃんから外し、代わりに自分の腕に乗せて隣に寝ころんだ。
そんなことにも気づかずスヤスヤと眠るライナに、そっとキスをした。
「おやすみなさい、ライナさん」
やがて、寝息が二つとなった。
***
「……ん?この状況は何だ?」
フェリスが宿に戻ると、部屋の真ん中でスヤスヤと眠る大の男が二人。
そしてシルに足をのっけられて泣いているブーちゃんがいた。
―end―
ドンと来い、100のお題
055:ペット
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