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理想と現実(シラオイ・学パロ) [ 80/196 ]
ライナ・リュートは眠っていた。
それはもう、スヤスヤと…
だが、ライナのつっぷしている机の上には山積みとなったノート・教科書・ドリル…
それには全く目を向けず、ある意味必死で眠るライナ。しかし、夏休みも半ば過ぎた今、いいかげん手をつけなくてはならないことくらい嫌でもわかる。
わかるからこその現実逃避だ。
ちなみにライナの理想としては、初日に全て片付け、後はひたすら寝ているつもりだった。真剣な話。
しかし「面倒くさい」「まだまだ休みはあるし」という思いから先に延ばし、先に延ばし…
今に至る。
担任の怒る顔が目に浮かぶ。きっとあの無表情のまま、どこからか取り出した竹刀でライナの首を強打するのだろう。
その痛みを想像してライナはちょっぴり泣きたくなった。
──ピンポーン
チャイムが鳴る。
しかし、面倒くさい。
どうしたものかと思いながらも眠り続けていると、またチャイムが鳴る。
数度、繰り返されると、仕方なく立ち上がった。
「おはよーライナ…つってももう昼だけどな」
そこにいたのは幼なじみのシオン。成績優秀で生徒会長をやっている。
「……ライナ、お前今まで寝てたのか」
「ぐう」
「人が話してるのに寝るなよ」
シオンはため息を吐くとライナ宅に乗り込んだ。
「……まさか全くの手つかずか?宿題」
「失礼な。たしか数学なら…」
「数学なら?」
「一問やった」
「……」
自信満々なライナ。
決して自慢できるようなことでもなかろう。
「お前のクラス、担任はフェリス先生だっけか」
「んー」
「…殺されるぞ」
「俺もちょっと生命の危機を感じる」
冷や汗ダラダラ…
「シオン〜手伝え!」
「ヤダ。お前の『手伝え』は俺に全部やらせること前提だからな。それを手伝うとは言わない」
「じゃあ全部やれ!」
「ヤダ」
理想は宿題に悩ませられることなくのんびり、ダラダラした夏休み。
現実は毎年、幼なじみに押しつけるべく苦労を強いられる夏休み。
…果たして、理想の夏休みが来る日はあるのか
─end─
‡配布元:銀ノ弾丸
‡URL:http://pksp.jp/silver-bullet/
10題1
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