版権 | ナノ
海に忘れてきたモノ(シオライ) [ 98/196 ]
「シオン、俺寝る」
そう言うとライナは眠りについた。
何ともまあ…有言実行型なもので。
「…よくもまあ、そんなに寝れるな」
そう呟くと、シオンは苦笑した。
目の前に広がる、海。
今は夜で、闇の色へと色を変えた海が、静かな波音を立てる。
二人は浜辺からそれを見ていた。
「なあ、ライナ」
「…………」
「──起きないとキス…」
「あーよく寝た!!」
「…………」
「な、何だよ」
「傷つくなー、そういう反応」
シオンは不満気な顔をして、ライナの肩に手を置いた。
「やっぱりキス…」
「しねーよ!!」
ライナが声高に否定すると、シオンはしゅんと沈んでしまう。
そんな反応されると、こっちが悪いような気になる。
が、それがわかったのかシオンの手が肩から腰に動く。
「傷ついた。ライナがキスしてくれないと治らない」
「いっぺん死ね」
けれど
シオンがライナの肩に手を置き、ゆっくりと顔を近づけていくとライナは目を閉じた。
「好きだ」
「…///…」
波だけが聞いていた
#######
シオンは王室にいた。
そして、学生の頃を思い出していた。
あの頃のように笑い合うにはどうすればいい?
あの頃のように冗談を言い合い
笑って
傷ついたり
悲しんだり
怒ったり
何の不安もなかった訳じゃない
不安だらけだった
でも、その先には平和があるのだと
信じて疑わなかったあの頃
あの頃に戻りたい
「ライナ…」
けれど
あの頃のように笑えない
あの、二人で行った海
あそこに忘れてきたのかもしれない
心から笑い合う方法を
ライナは海を見ていた。
ローランドとは違う。異国の海。
ローランドで見た、あの海とは違う
「シオン、どうしてっかな」
けれど、そんなことは関係ない
ただシオンを思い出す
海は波音を立てながらライナにシオンを思い出させる。
思い出はいつだって美化されるもので、だから懐かしいと思い
会いたいと思い
好きと、伝えたくなる
ライナは苦笑いをした
笑い方を忘れた二人を
今日も海は見守っている
─end─
‡配布元:銀ノ弾丸
‡URL:http://pksp.jp/silver-bullet/
10題1
[*prev] [next#]
TOPへ